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2025年2月16日 (日)

上下本線を区別しない停車場

今回は、前回の記事の最後で触れた、「上下本線を区別しない停車場」についてのお話です。

「上下本線を区別しない停車場」とはどのような停車場を指すのかという点については、私は今まで
「一線スルーのように、複数の本線を持ち、上下共用の主本線とそれ以外の副本線により構成される停車場」と理解していました。
具体的には以下のようです。

会津田島駅は上下本線を区別しているが、
19790808jhkat

会津坂下駅は区別していない。
19790807jhkab

会津宮下駅は区別しているが、
19790807jhkam

会津川口駅は区別していない。
19790807jhkak

只見駅は区別しているが、
19790807jhktm

大白川駅は区別していない。
197908072jhkos

郡上八幡駅は区別しているが、
19800404jhkgh

美濃白鳥駅は区別していない。
19800404jhkms

といった感じです。

ところが前回の仁井田駅に関する文書を見ると、昭和5年以前の仁井田駅は
・上下本線を区別していない
・列車交換はしていない
・対向の双動転てつ器がある(=安全側線がある?)
といった感じで、本線が1線なのか2線なのかもよくわからず、私の思っていた「上下本線を区別しない停車場」とはちょっと違うような気がしてきました。
なので「上下本線を区別しない停車場」の定義について改めて調べなおしてみることにしました。

 

●運転取扱基準規定
「上下本線を区別しない停車場」という用語は運転取扱基準規定に登場します。但しこの言葉の定義づけが行われているわけではなく、唐突に
第2章第2節53条(上下本線を区別しない停車場における列車の行違い線路)
というタイトルで以下のように記されています。
----------------------------
「単線区間であって、上下本線を区別しない停車場で、臨時に列車の行き違いをさせるときは(中略)次の各号の1に該当する線路に進入させるものとする。
(⑴、⑵は省略)
⑶旅客列車、混合列車又は準混合列車と貨物列車とが行き違うときは、旅客列車、混合列車又は準混合列車を場内信号機の設けてある線路」
----------------------------
との記述があります。
ということは、
・上下本線を区別しない停車場では通常は列車の交換を行わない?(行えない?)
・列車交換の際は側線を使用するということ?(よっぽどの非常事態を想定した規定?)
・側線を使用すれば列車交換が行えるような配線になっている必要があるということ?(磯鶏駅のような?)
よくわかりません(汗)。

●鉄道小事典(誠文堂新光社1974年)
列車ダイヤで使用される記号についての説明の中で以下のように記されています。
----------------------------
△ 行き違い不能駅
▲ 上下本線を区別できない停車場
----------------------------
上下本線を区別「できない」停車場?
いずれにせよやはり言葉の定義づけはありません。

●鉄道ピクトリアル1964年1月号
列車ダイヤの話という記事の中で駅名欄の記号について以下のように書かれています。
----------------------------
△ ホームが1線にしかない駅
▲ 行き違いのできない駅
----------------------------
鉄道小事典の記述とはちょっと合わない・・・

●とあるサイト様
列車ダイヤに付けられた記号の意味を解説されているサイト様があり、こちら様では停車場の種類を表す記号として以下のように記されています。
----------------------------
△ 旅客列車相互の行き違いのできない停車場(回送列車を除く)又は上下本線を区別しない停車場
▲ 上下本線を区別できない停車場(閉塞区間の中間に介在する停車場には、これを省略する)
----------------------------
やはりよくわかりません(汗)。
△の「旅客列車相互の行き違いのできない停車場」は鉄ピク誌の「ホームが1線にしかない駅」と同じ意味のようには思いますが。

●鉄道ダイヤ情報1989年4月号
掲載されている1989年3月改正列車ダイヤの停車場欄を見て、△もしくは▲の記号を探します。
・信越線 直江津~新潟間 →新潟にのみ▲あり
・上越線 水上~長岡間 →▲の付いた停車場なし
・白新線 新潟~新発田間 →新潟、早通、豊栄、黒山、佐々木にのみ▲あり
・羽越線 新津~酒田間 →京ヶ瀬、神山にのみ▲あり
・弥彦線 東三条~弥彦間 →燕、弥彦にのみ▲あり
・越後線 柏崎~新潟間 →柏崎、西山、出雲崎、小島谷、分水、巻、越後曽根、越後赤塚にのみ▲あり
・磐越西線 会津若松~新津間 →新関にのみ▲あり
・只見線 只見~小出間 → 大白川、越後須原にのみ▲あり
・飯山線 十日町~越後川口間 →越後川口にのみ▲あり
・米坂線 今泉~坂町間 → 坂町にのみ▲あり
・陸羽西線 新庄~余目間 →▲の付いた停車場なし
△はありませんでした。

最近の前面展望動画を見ますと、
・白新線の早通、豊栄、黒山、佐々木は一線スルーですので、▲印は一線スルー(=上下本線を区別しない停車場)を示しているともとれそうです。西新発田も一線スルーですが、Wikipediaによれば2000年に改修されたもののようですので▲がなくても不思議ではありません。
新潟の▲はわかりません。
・羽越線の京ヶ瀬、月岡が一線スルーです。水原はちょっと微妙です。神山はWikipediaによれば1990年代に棒線化されたようです。
・弥彦線のは一線スルーです。弥彦はホーム1面のみです。
・越後線の西山、出雲崎、小島谷、分水、巻、越後曽根、越後赤塚はいずれも一線スルーです。但し▲の付いていない寺泊、内野も一線スルーです。
・只見線の大白川は前述の通り一線スルーです。

以上のことから、なかなか決定的とはならないのですが、大雑把に言えば
上下本線を区別しない停車場
=列車ダイヤで▲の記号が付される停車場
=一線スルーのように、複数の本線を持ち、上下共用の主本線とそれ以外の副本線により構成される停車場
という解釈は間違いではないように思えてきました。

この解釈ってどうなんでしょう?
皆様のご意見をお伺いしたいと思います。

 

もともとは1930年以前の仁井田駅の配線がどうなっていたのかが知りたかっただけなのですが、話がずいぶんと変な方向に進んでしまいました(汗)。

 

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コメント

脱線を重ねるようで気が引けますが、大白川駅の表と裏ってなんなのでしょう?感覚的にはわからなくもないのですが、このような番号付けってほかにもあるのでしょうか?

mulapaoさん
国鉄時代の秋田局、新潟局あたりの比較的規模の大きい駅(坂町、酒田、秋田、大館など)で使用されていたようです。本線を境にして本屋側の線路を表、反対側の線路を裏としていた感じですね。
そのような規定があったのか、単なる慣習であったのかはわかりませんが。

興味深い記事をありとうございます。

「上下本線を区別しない停車場」の f54560zgさんの解釈、単線区間の停車場であれば納得できると思いました。

一方、「上下本線を区別できない停車場」の「▲」というのは、新潟駅以外にも、複線区間の停車場についているところもあるようなので、まだモヤモヤしたものが残っています。

新潟の「▲」なのですが、

鉄道ダイヤ情報 増刊号
鉄道趣味パワーアップ・ガイド’96

に所収の特集記事

「運転情報を読む」
文●前田 敦・松村 寛
(鉄道友の会東京支部運転部会)

の52~53ページに上越線・信越線 水上~新潟間の1時間目盛りの列車運行図表が抜粋されており(作成年月の記載はない)、その停車場名欄の新潟駅の左についている「▲」の解説として、同記事51ページに、

「新潟駅は,”上下本線を区別できない”とあるが、上下本線がいずれも双方向へ進入・進出が可能(上り本線への下り列車到着,下り本線から上り列車発車が可能)という意味だ。」

と書かれています。

一方、鉄道ダイヤ情報1994年4月号に所収の記事

「3か月連続 短期集中入門講座 第3講(最終回) ファースト・ステップ列車ダイヤ」
構成 奥山敬志・鉄道ダイヤ情報誌編集部
文 奥山敬志・松村 寛・前田 敦(鉄道友の会東京支部運転部会)

の44~45ページに掲載の

昭和61年11月1日改正の東北本線の上野~宝積寺間の2分目列車運行図表の抜粋をみますと、「▲」がついている停車場は、

上野(常磐)、上野、大宮、小山、宇都宮(貨)タ、宇都宮、宝積寺

でした。こちらは「▲」の説明として「上下本線を区別できない停車場(閉塞区間の中間にある停車場は除く)」以上の解説はありませんでした。

宝積寺などは、東北本線の列車に関しては、新潟駅の「▲」の意味合いと完全には一致しないようにも思えますので、烏山線の列車に対して「▲」という意味合いなのでしょうか・・・ここらへんがよくわかりませんでした。

ありがとうございます。なるほど本屋の表と裏、住宅のような感覚ですが少なくともそのようなローカルルールはあったということですね。面白いです。全国を見渡せば他にも何が潜んでいるかわかりませんね。
本題の方ですが、上下本線を区別「しない(できない)」は、区別する意味がない、ということなのではないでしょうか。一線スルーは明らかとして、例えば本サイトの新潟駅配線を見ると確かにどれかを本線と定義してもまるで意味がなさそうで、ターミナル駅はだいたいそんな感じのところが多そうです。表と裏同様に各所の実情はそれぞれですから、全国統一ルールより現場での利便性最優先で定義付けすればよいということのような気がします。そう思って東北本線の▲をみると支線分岐のある駅がほとんどで、独特の取り扱いが発生していそうな感じがあります。宮脇俊三氏の「時刻表2万キロ」の冒頭で、時刻表で計算した旅客営業キロの算出が国鉄公式のものと合わず本社まで出掛けて行って確認するくだりがありましたが、最終的には本社の職員に「厳密を期そうとしてもあまり意味がないのでは?」と嗜められて帰る場面と同じような感想を本記事にももちました。でも、どうしてそうなっているのかを掘って行く作業は確かに楽しいです。

初めまして。
記事内容を興味深く拝見しましたが、気になった点がありましたので投稿します。
記載されている配線図を見た限りですが駅本屋側=信号扱所がある側が本線となっているように見受けられます。
また、会津川口駅や大白川駅は例外はあるものの、転車台を使った方向転換や機回しなどの構内運転を頻繁に行わない線路を本線としているように見えます。
昔はタブレット閉そくでしたし、運転取扱い作業のしやすさみたいなのも勘案されていたのではないでしょうか。

KASAさん、ありがとうございます。
なかなかスッキリしないですね(汗)。

mulapaoさん
おっしゃる通り「重箱の隅」感は否めないところではありますが、規定に「上下本線を区別しない停車場」と書かれていますので、どこかで明確に定義されていそうな気はするのですが。
規定を初めて読んだ新人職員が先輩職員に「この『上下本線を区別しない停車場』って何ですか?」と聞いたときに、先輩職員が何と答えるのかが気になります(笑)。

もぐら車掌さん、初めまして。
おっしゃる通り「使い勝手」を勘案して決められているのように思います。特に転てつ器の転換に要する工数の削減でしょうか。もっとも発条転てつ器を使用すればよいような気もしますけれど。

確かに規定に明記してあるのはとても気になりますね。重箱の隅ほど美味しいというのも実感ですし。しかし、これはポジティブリスト方式の定義と考えられないでしょうか。つまり、明示的に定義できる場合以外はあえて未定義のまま残されている。全てを厳密に定義する事務コストが実益を上回っているような場合です。「上下本線を区別しない」場合というのは、明示的に上下本線が区別できている場合の補集合に位置づけられる結果、どこにも定義はないということなのかもしれません。とはいえ、きちんとした定義があるなら見てみたいという欲求は大いにあります。

昭和8年の『運転法規』に

『平常上下本線を区別しない停車場(列車の行違を取扱ふ設備はあるも平素一線は閉鎖してゐるもの)に於て、』

ということが書いてあります

清水桝一 著『運転法規』,大阪鉄道局教習所同窓会講演部,昭和8. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1026984 (参照 2025-02-20)

『区別しない』と『区別できない』も記号が別にあるようなのでいまいちよくわかりません

上下本線を区別しない駅、 上下本線を区別できない駅の二つの表現がありますね

さて、鉄道ピクトリアル1964年1月号「列車ダイヤの話」田頭守氏は明確に「▲ 行き違いのできない駅」と書かれています
また、列車設定基準第16条別表ウ項には「上下本線を区別できない停車場」とあります


停車場で行き違いできないってのは?
支線の分岐駅でホーム到着前に分岐している構造の駅のことを指すのではないでしょうか

思いつくのは会津鉄道(旧会津線)の西若松駅、旧川俣線の分岐する東北本線松川駅など
  
その目で昭和47年代のダイヤ見てみると、
西若松は△ 松川駅は▲となっています

一方で新潟局では 新潟駅や坂町、酒田
東京三局(北西南)では複線区間の上野、東京、品川などにも▲が記入されており、これまた根拠不明ですよね

戻って列車設定基準第16条別表ウ項停車場の種類を表すものとして
略、職員無配置停車場(●)(業務委託駅半●)、旅客列車相互の行違いのできない停車場(△)、上下本線を区別できない停車場(▲)と定められてます

これら記号はダイヤ設定、臨時列車設定、運転整理にあたるいわゆるスジ屋さんにとって留意するべき停車場を明確にする目的ではないかと思います

そして mulapaoさんやf54560zgのいうとおり、拡大解釈?して、①新潟駅のように信越本線、越後線の終着駅、白新線の起点駅、車両基地出入りなどで
実質的に本線を区分しないでスルー運転、折り返し運転するケースや
②折り返し運転できる駅(例えば下り列車を上り本線に到着させて折り返しできる信号設備がある駅 、例酒田駅)などに▲マークを付しているのではないでしょうか
あくまでも素人の推察ですが・・

どこかに、実務者用の解釈書があるような気もしますが、趣味者の目に留まることはまれなんでしょうね


皆様
いろいろな情報・ご意見ありがとうございます。
なかなか難しいところですね。

コメント欄に画像等を貼り付けられませんので。

どの駅が「上下本線を区別しない停車場」か、など停車場関係の基本資料として、ダイヤグラムの左右の端に記載されている停車場欄などだけを抜き出した資料を載せることにしました。

鉄道資料箱
https://railbox.fc2.net

とりあえず、東海道線東京口から始めました。
ご高覧いただければ幸いです。

NZさん、ありがとうございます。
コメントさせていただきますね。

乗り遅れの感がありますが、コメントを差し上げます。
いつも、とても興味深い記事に感嘆しております。

▲ですが、本線の呼称が(下本)(上本)(本)ではなく、(1)(2)(3)…などとなっている停車場に表記されていると当方は解していました。

やわやわとまれさん
定義がはっきりしていないので、いろいろな解釈ができてしまいますね。

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