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2023年5月28日 (日)

呼野駅のスイッチバック

前回の記事の通り、日田彦山線の呼野駅はかつてはスイッチバック駅でした。
鉄道ピクトリアル1971年5月号には簡単な配線図が掲載されています。こんな感じです。
197102yn
簡略化した図とは言え何かおかしい。ホームが本線上に描かれています。これですとスイッチバックをするのは貨物列車のみの初狩状態になってしまいます。
Wikipediaを見ますと、呼野駅のスイッチバックは「1970年代に列車が全てディーゼル機関車や気動車に交代したため1983年に廃止された」と書かれています。実際、1971年8月までには旅客列車のDC化は完了し、無煙化は1973年頃です。その割にはスイッチバック廃止1983年というのは遅いような。ちょっとモヤモヤします。
一口に「スイッチバック廃止」といってもいろいろややこしいところがあります。韮崎駅御代田駅の例もありますし。
ということでちょっと調べてみることにしました。

 

まず最初に、駅間の所要時間に着目してみます。スイッチバック運転が行われている場合は折り返しに要する時間が余分にかかりますが、行われなくなるとその分の時間が短くなりますので、駅間の所要時間の推移を追っていけばスイッチバックが行われなくなった時期を推測することができそうです。呼野駅の場合にはその配線から、下り列車の呼野→採銅所、上り列車の採銅所→呼野の所要時間に変化が現れるはずです。
そこで片っ端から時刻表を調べるわけですが、ご承知の通り時刻表には発時刻しか掲載されていないため、時刻表から得られる駅間の所要時間には交換待ち等による停車時間も含まれてしまいます。そこで、停車時間の影響を最小限に抑えるため、それぞれの年月の時刻表に掲載されている日田彦山線の全ての列車について下り列車の呼野→採銅所、上り列車の採銅所→呼野の所要時間を調べ、その中で最も短いものを選び出すことにしました。
結果は以下の通りです。

Ynsdsyst
・グラフの横軸は等間隔ではありません(汗)。
・一見してわかる通り、1971年10月~1972年4月の間で変化が見られます。1971年10月までは上り下りとも最短でも10分を要していたものが、1972年4月以降は8分と、2分短縮されています。この2分の短縮は、スイッチバックをすることなく呼野駅を発着する列車が現れたことによるものではないかと推測します。
・ということは、1971年10月~1972年4月の間に、スイッチバックしないでも済むような設備への改修(=本線上への旅客ホームの設置)が行われたのではないでしょうか。
・1971年8月までに旅客列車のDC化が完了したことがこれを実現したのかもしれません。

 

ただし、これをもって「スイッチバックが廃止された」とするのは早計で、もう一つ確認しておかなければならないことがあります。
Googleマップや前面展望動画を見ますと、本線上に設けられたホームは片面1面のみっぽいです。つまりスイッチバックが廃止されたのであれば呼野駅は棒線駅となって列車交換はできなくなるはずです。果たしてそうなったのでしょうか。

 

なので、次の着目点は呼野駅での停車時間です。棒線駅になったのであれば停車時間は長くても1分程度となるはずです。
具体的にはそれぞれの年月の時刻表に掲載されている日田彦山線の全ての列車について下り列車の石原町→呼野、上り列車の採銅所→呼野の所要時間を調べ、その中で最も長いものと最も短いものを選び出しました。
その結果は以下の通りです。赤線が最も長い所要時間、黒線が最も短い所要時間で、この差が最も長い停車時間ということになります。
Ynsyj
・同様にグラフの横軸は等間隔ではありません。
・前述の通り遅くとも1972年4月には呼野駅には本線上にホームが設けられていたと思われますが、下り列車を見ますとそれ以降でも呼野駅で7分程度停車している列車が存在します。上りでも4分程度停車する列車があり、棒線駅としては違和感ムンムンです。
・そこで時刻表1980年3月号からダイヤを作成してみました。貨物列車、回送列車等は含まれません。198002yndg
・17時頃に737Dと734Dが呼野駅で交換しています。すなわちこの時点では呼野駅は棒線駅ではなく、交換が可能な駅です。
・本線上にホームが設けられたにもかかわらず列車交換が可能ということは、おそらく旧ホームは撤去されずに残され、交換を行わない列車の場合は本線上のホームに発着してスイッチバックなし、交換を行う場合は一方の列車が旧ホームでスイッチバック、他方が新ホームでスイッチバックなしという、新旧ホーム併用での変則的なスイッチバック運転が行われていたのではないかと推測します。
・前述の7分程度の停車をする下り列車は14時30分頃の731Dですが、すれ違う旅客列車はありません。貨物列車とすれ違うのでしょうか。
・737Dと734Dの交換において、どちらがどのホームに止まるのかも気になります。普通に考えれば737Dが旧ホーム、734Dが本線ホームということになろうとは思いますが。また通票閉そく式であれば通票の授受が面倒そうです。
・その後少なくとも1984年6月以降は停車時間が最長でも1分程度となっていますので、これは呼野駅での旅客列車同士の交換が行われなくなったことを表していると思われます。若干時期はずれますが、時刻表1984年6月号と貨物時刻表1984年2月号とを組み合わせて列車ダイヤを作成しても、呼野駅での列車交換は行われていないようです。すなわちこの時期にはスイッチバックが全面的に廃止された、ということになると思います。Wikipediaの記述とも合致します。

 

以上、改めて整理をしますと、
①少なくとも1971年10月以前は本線上にホームはなく、列車交換の有無に関わらずすべての停車旅客列車はスイッチバックしていた。これは動力車の性能上、勾配途上での起動が難しかったためと思われる。
(=通常のスイッチバック)
②1971年11月~1972年4月の間に本線上にホームが設けられ、列車交換を行わない停車旅客列車についてはスイッチバックが廃止された。従来のホームはそのまま残され、列車交換を行う場合は一方の列車がスイッチバックを行って従来ホームに発着するようになった。
旅客列車については蒸気機関車牽引から気動車へと動力性能が向上したことにより勾配途上での起動が可能となったが、列車交換のためスイッチバック設備は存置された。
(=変則スイッチバック)
③1983年2月から1984年6月までの間に呼野駅でのすべての列車交換がなくなり、列車交換のためのスイッチバック設備は不要となって従来ホームは廃止された。
(=スイッチバック廃止)
ということになるのではないかと思います。
毎月の時刻表が完璧に揃っていれば切り替わった年月を特定できるかもしれないのですが(汗)。

 

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バックナンバーはこちらからどうぞ。

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コメント

「日豊・久大・日田彦山線列車ダイヤ 昭和61年11月1日改正 九州総局」(1986年) を見ると、
呼野駅には、⚫︎と▲の記号がついているので、職員無配置停車場で上下本線を区別できない停車場です。しかし、閉そく区間の中間に介在する停車場ではありません。
本線の有効長は上本、下本とも「1ー299」となっています。
午前の分しかないのですが、貨物列車はなく、停車する列車の停車時分は30秒、上下列車の行き違いはありません。

本文の検討③のスイッチバック廃止後の状況に整合的です。

ご無沙汰しております。

「昭和55年(1980年)10月1日改正 全国列車ダイヤ」を見ると、呼野駅には「S」の記入がありますので、スイッチバック駅になっています。閉塞方式が、石原町~呼野は「3」、呼野~採銅所は「1」になっていますので、通票閉塞であったようですね。したがって、通票の授受があったことになりますし、その要員もおられたということになります。 

昭和58年6月発行の『九州720駅』で確認しました。

(以下引用)

 呼野は構内が一〇〇〇の一七の勾配をもつ
 スウィッチ=バックの駅。しかし、大半の列車は
 スウィッチ=バックしないで二番ホームの上下通過線を
 通る。

(引用終了)

同年八月に同書を参照しつつ日田彦山線の
列車に乗りましたが、スイッチバック設備は
確かにあったものの、列車自体は上記引用の通り
だったように記憶しております。

上記の引用箇所は110頁です。

皆様
貴重な資料からの情報ありがとうございます。

こんにちは
初めまして。いつも楽しくブログを読ませて頂いております。
呼野駅スイッチバックの記事がありましたので書き込みをしてみました。

呼野駅の構造は
一番線(下り副本線)ホーム有
三番線(上り副本線)ホーム無
四番線(上下本線)ホーム有

旅客列車で列車交換がない場合は本線上の四番線で客扱いをし折り返し線、副本線には進入しない。
旅客列車同士で列車交換をする場合、下り列車がホーム有の下り副本線の一番線に進入し客扱い、上り列車は上下本線の四番線で客扱いをし折り返し線、副本線には進入しない。
旅客列車と貨物列車の交換の場合で下り列車が旅客列車の場合はホーム有の下り副本線の一番線に進入し客扱い、貨物列車は通過

昭和55年10月1日改正日田彦山線ダイヤでは、旅客列車同士の交換は1回、旅客列車(下り列車)と貨物列車の交換も1回のみ 旅客列車(上り列車)と貨物列車の交換は無し

こんな感じです。
ご参考になれば

参考資料
昭和54年3月現在 筑豊支線信号機位置図
昭和55年10月1日改正日田彦山線ダイヤ

ヲタクさん
情報ありがとうございます。
55-10列車ダイヤについては別途ご紹介させていただく予定です。

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