ハンプ押上線への移動方法
今回の記事も唐突で申し訳ありません。そんなものがかつて存在していたことを知る人も少なくなってきた、貨車操車場のハンプに関するお話です。
ハンプ操車場は、基本的には1つのハンプを上下列車で共用します。ですので、ハンプで分解を行う列車は、最終的には上下列車ともハンプの上流側の押上線に到着させる必要があります。
到着列車を押上線まで連れてくるパターンにはいくつか種類がありますので。今回はそのあたりを見てみたいと思います。
なお以下の文章では、ハンプから散転される方向と同じ方向の列車を順方向列車、その逆を逆方向列車と表現しています。
また操車場の名称は必ずしも正式なものではなく、通称を使用している場合があります。
●郡山貨タ
これが基本的なパターンではないかと思います。順方向列車は押上線に直接列車として到着し、逆方向列車は着発線に到着した後入換で押上線に移動します。
この方式で問題となるのは逆方向列車における押し上げ作業と押上線への進入の競合ではないかと思います。たとえば、上りハンプ到着1番線で押し上げ作業をしている最中は、これが終わるまで次に分解作業を行う編成を上りハンプ到着2番線に進入させることができない、ということです。押し上げ作業はゆっくりとした速度で行われますので、支障時間は長時間に及びます。ですので取扱車数が多い操車場では問題となりそうです。
●高崎操
列車の上下は逆ですが、郡山貨タと全く同じ方式です。
●塩浜操
抱き込み式ではない点が異なりますが、順方向列車は直接列車として押上線に到着し、逆方向列車は着発線から入換で押上線に移動するという点では郡山貨タや高崎操と同じです。
但し操車場の立地から見て、逆方向列車の分解が行われることがあるのかどうかはわかりませんが。
●静岡操
静岡操の特徴は、着発線群の中の一つである上1から列車として押上線に向かうルートが設備されてるところです。つまり順方向列車だけでなく逆方向列車も押上線に列車として直接到着することができるわけです。
到着線から押上線への入換移動という手間が減りますので直感的にはこのほうが効率的に感じるのですが、郡山貨タや高崎操がそうなっていないところを見ると何らかのデメリットがあるのでしょう。押し上げ作業と競合した時に到着列車をどこかで待たせなければならないのであればその後の移動は入換のほうが面倒が少ないのかも。
実際、列車として押上線に進めるの上1の1線だけしかなく、上1~上3に到着して入換で押上線に移動することもできますので、実際のところどのように運用されていたのかはわかりません。
●北上操
北上操の場合は順方向・逆方向とも押上線に直接列車として到着します。入換で押上線に移動するルートはありません。
逆方向の到着列車が押し上げ作業と競合した場合は、図からははみ出てしまっていますが青森方に上り着発線がありますので、ここで押し上げ作業が終了するまで待たせておくようなことがあるのかもしれません。
●大宮操
今までご紹介した操車場は順方向列車については押上線に直接列車として到着するようになっていましたが、大宮操は着発線に到着後反対方向に入換で移動して押上線に向かうようになっています。これは意図的にそうしたというよりは、全体的なレイアウトの関係でそうせざるを得なかったという気がします。あえてこのようにするメリットは考えずらいですので。
逆方向については、直接押上線に列車として到着するルートがありますが、このルートは余り長い間設けられていたものではなかったようです。ですので、着発線に到着後入換で押上線に向かうほうがメインだったのではないかという気がします。
●稲沢操
取扱車数の多い大規模操車場ですので、逆方向の列車を押上線に入れるときの押し上げ作業との競合を解消する工夫がされています。すなわち、到着列車はいったん押上線を通り過ぎて折返線に進入し、ここから推進で押上線に入ります。推進は入信による構内運転のようです。
推進運転という手間が増えますが、分解作業の効率を優先した結果なのだと思います。
●吹田操
日本を代表する大操車場ですので、稲沢操同様逆方向列車は推進で押上線に進入します。
推進運転はやはり構内運転と思われます。
ここは上下のハンプが分かれているレイアウトです。
●田端操
接続する各路線の位置関係が特殊なため変わった形態ではありますが、順方向列車は列車として押上線に直接到着、逆方向列車は入換による推進で押上線に入ります。
山手貨物線側には到着列車用の副本線がなく本線1線のみですので、折返線への入換は忙しそうです。また常磐線方面からの到着列車は結構な距離を入換で移動してきます。
●新鶴見操
逆方向列車が推進で押上線に進入するのは稲沢操や吹田操と同じですが、違うのは推進が構内運転ではなく列車としての運転であるというところです(設備上は構内運転での推進もできなくはなさそうですが)。
ただ、構内運転で推進する方法と列車として推進する方法のそれぞれのメリット・デメリットがよくわかりません(汗)。少なくとも到着時刻の採時は、稲沢操・吹田操は折返線に到着した時点、新鶴見操の場合は押上線に到着した時点になるのだと思いますが。
●武蔵野操
新鶴見操と同じです。
分解作業の機械化・効率化のための技術を注ぎ込んだものの、10年で役割を終えました。
ヤード集結型の輸送が廃止されて40年近くなります。今頃こんなことを書いて、「何だかなぁ」ですね(汗)。
配線図は北上操はSYさん、それ以外はT.Mさんよりご提供いただきました。
ありがとうございます。
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興味津々のテーマですね。展開が楽しみです。
一番気がかりなのは、どこへ到着するにしても牽引機から入換機への引き継ぎはどこで行うのでしょう?
押上線へ到着すればそれが結論ですが、吹田操の上りなどは、到着線→押上線、を牽引機が行った方が合理的に思えます。
投稿: C6217 | 2022年6月 3日 (金) 21時39分
鉄道ジャーナル83年9月号にヤード輸送末期の吹田操車場のルポがありますが、上り列車は到着線→押上線推進までが着機がやっています。
ただヤード輸送末期のこの頃は特殊継走というハンプにかけない入換を着発線でやっており、例えば特殊継走とハンプ分解の両方あると、着発線でまず入換(着機と)並行して入換機も使ってます)を行い、そのあと到着線に引き上げて(これは列車として運転と思われます)、押上線に押し込むと言う流れを上り列車はやっていることが書かれています。
投稿: 北東航21 | 2022年6月 4日 (土) 00時49分
推進で押上線に至るケースではけん引機が行うものと思っています。吹田操については北東航21さんの通りですし、そもそも稲沢や新鶴見などは折り返し線が行き止まりですのでけん引機が推進するしかないと思います。
着発線に到着する場合(推進はしない場合)は、着発線到着時点で機関車を付け替え、入換機が押上線に連れていくのではないかと思います。
投稿: f54560zg | 2022年6月 5日 (日) 18時16分