« 志津川・清水浜・歌津・陸前港・蔵内・陸前小泉配線図 | トップページ | 本吉・小金沢・大谷・陸前階上配線図 »

2020年6月29日 (月)

併合閉そく

かねてよりNZさんとしげぞう@さんより併合閉そくについてのリクエストをいただいておりました。
併合閉そくについてはよく知らない部分が多いものですから(汗)、いろいろと文献を引っ張り出して調べてみることにしました。

参考にした資料は以下の通りです。
①運転取扱基準規定 国鉄運転局保安課法規監修 昭和39年12月通達第33号
②鉄道実務受験講座運転保安装置 原英雄 昭和38年3月10日初版
③運転保安設備の解説 吉武勇・明本昭義 昭和48年1月15日初版
④わかりやすい連動装置・図表の解説 吉武勇 昭和54年10月25日初版
⑤鉄道ピクトリアル1995年2月号 「腕木とタブレットを訪ねて」 岩成政和
⑥鉄道ピクトリアル1996年12月号 「併合閉そくのはなし」 多羅尾光睦
⑦鉄道ピクトリアル2017年10月号 「非自動閉そくの論理と定義」 岩成政和

これらをもとに整理してみました。

 

●閉そく区間の併合の目的
これについては省略します(汗)。

 

● 併合後の閉そく方式
下表をご覧下さい。
R_20200627200801
・規定で定められたものは文献らんに「①による」と書かれた3行です。
・これに加えて資料②には昭和30年度の工事で併合前後とも連動閉そく式を実施した事例があると書かれています。レアケースだとは思いますが。
・また資料⑥には、国鉄・JRではありませんが、併合後の閉そく方式として通票閉そく式、通票式を実施した例も記載されています。

 

●併合を行うための閉そく装置の対応
1)併合後に連査閉そくが施行される場合
これについては二説あります。一説は下図の通り。
1r_20200629203901
・併合時の閉そく区間の境界となる駅の連査閉そく機に夜間併合閉そく機を付設する。また併合後に中間となる駅に閉そく併合てこを設ける。
・閉そく併合てこを反位にすると下図のようになる。
2r_20200629203902
・両端の境界駅の夜間併合閉そく機が直結され、連査閉そく機は夜間併合閉そく機を介して接続される。但し夜間併合閉そく機を取り扱って閉そくを行うわけではなく、 併合後も併合前と同じ閉そく機を使用して閉そくを行う。中間駅では連査閉そく機は切り離されて取り扱い不能となる。

もう一説は、おおむね上記と同様なのですが、ちょっとだけ違います。
3r_20200629203901
・違うのは併合閉そく専用の閉そく機が設けられ、併合閉そく施行時は通常時の閉そく機を使用せず併合閉そく専用の閉そく機を使用する点です。

2)併合後に票券閉そく式が施行される場合
・中間駅に併合てこを設け、これにより中間駅の閉そく機の切り離しや境界駅同士間の通信といった回線の変更を行う。また境界駅には通券箱を配置する。
・併合てこは連動種別により機械てこ、卓上電気てこ、電気機電気てこを使用する。
・使用する通票の形状は通常時と併合時とで異なるものとするのを原則としましたが、同じ形状のものを使用したケースも存在したようです。また、併合時の票券閉そくの通票を一種~四種以外の形状にした例もあったようです。

3)併合後に連動閉そく式が施行される場合
・連動閉そく式の場合は停車場構内には軌道回路が設けられていないため、併合時に閉そく中間駅となる駅の構内に軌道回路を設けて境界駅間に連続した軌道回路が形成されるようにする。
・併合閉そく用の閉そくてこを設ける。
・境界駅には閉そくの併合を示す表示灯(運転士向け)を設ける。

4)併合後に通票閉そく式が施行される場合
・通常時に使用する通票閉そく機の他に、併合時に使用する通票閉そく器を設ける。誤扱い防止のため、樽見鉄道線では通票閉そく機の色を変えています。同和小坂線では型式の異なる閉そく機を使用したようです。

5)併合後に通票式が施行される場合
・名鉄美濃町線(軌道)の例ですので若干特殊かとは思いますが、併合閉そく施行中は2つの通票を束ねて携行していたようです。

 

●連動装置の対応
③④に第2種継電(発条転てつ器使用)の連動図表の架空の例が記載されています。軌道回路はないので連査閉そくではなさそうです。
1r_20200629204001
・併合閉そくてこ3Lを設け、これにより下りの場内信号機1R・出発信号機2R及び転てつ器21、51を鎖錠します。信号機は消灯させるようですが、連動図表上にはそのような記述はありません。遠方信号機や中継信号機は停止または注意を現示するようです。
・併合時は51を反位に鎖錠する必要があるため、そのための切り欠きが電磁鎖錠器の転てつかんに設けられています。反位で鎖錠される発条転てつ器は、このようなケース以外ではかなりレアでは?(鳴門駅にはありましたが)。
・また、電磁鎖錠器による鎖錠は電磁鎖錠器への通電により行われます。従って停電すると解錠されてしまって不届き者が転換してしまう恐れがあるため、蓄電池を配置して鎖錠を確保しているようです。


④には第1種機械の連動図表の架空の例が記載されています。
2r_20200629203901
・併合閉そくてこ6は回路制御器付きの機械てこで、これにより場内信号機1と出発信号機7を鎖錠し、さらに回路制御器により閉そく回線を直通させます。

 

●運転士の対応
・自身の運転する列車と併合閉そくの施行に関する情報は運転士用の運転時刻表に記載されているので、これに従うことになるのだと思います。
・連動閉そく式や連査閉そく式を併合時に票券閉そく式にする場合は、通常は携帯しない通票を携帯することになるので注意が必要ですね。


●駅の運転取扱者の対応
・併合後に中間となる駅の運転取扱者は、併合を施行する列車の直前の列車が境界となる駅に到着したことを確認したら併合閉そくてこの取り扱いを行い、併合を施行する最後の列車が境界となる駅に到着したことを確認したら併合の解除を行うものと思われます。
・この取り扱いは列車の進行に合わせて駅ごとに段階的に進んでいくのであって、線区単位で一斉に、というわけではないのでしょうね。
・併合の取り扱いを行った後は、運転取扱者は仮眠をとるかもしくは他駅に引き揚げることになります。

 

●実例
1)施行の実例
・⑥に多くの例が記載されています。木次線、山田線、標津線、宗谷本線、津軽線、八戸線、身延線、北上線、仙山線、日高本線、同和鉱業小坂線、野上電気鉄道線、留萌本線、樽見鉄道線、名鉄美濃町線、足尾線、二俣線など。施行区間や施行時間などでいろいろなパターンが紹介されています。併合閉そくの準備がされていたにもかかわらず実施されなかった例も。

2)列車ダイヤの実例
・⑦に、同和小坂線と岡山臨港線、函館本線(36-10)の列車ダイヤが掲載されています。

3)運転士用の運転時刻表の実例
・⑥、⑦に実例が掲載されています。

 

●疑問
ここで疑問点をいくつか。
・併合後に中間駅が2つ以上となる場合、併合閉そくてこはどこに配置されてどのように取り扱われるのでしょう?
・前述の通り機械連動の駅の併合閉そくてこは機械てこの場合もありうるようですが、信号てことの連鎖を考えると信号てこと同じ形状で、信号てこと並べて配置されるのではないかと思うんです。そうなると第2種機械の駅などでは不届き者が転換してしまいそうな気が。カギでもかけるのでしょうか。
・併合時に中間駅となる駅の色灯信号機は消灯されるようですが、腕木信号機の場合はそのままでしょうか?
・併合時に境界となる駅には、運転士に対する注意喚起表示はないのでしょうか? 前述の通り併合後に連動閉そく式を施行したケースでは表示灯を設けたようですが、それ以外では? 山寺駅の記事でもLJさんから行灯の情報をいただいていますし。

 

いろいろと書きましたが、間違いもあろうかと思います。ご指摘お願いします。

また、文献⑥が非常に詳しいです。興味のある方はぜひご覧下さい。

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
バックナンバーはこちらからどうぞ。

« 志津川・清水浜・歌津・陸前港・蔵内・陸前小泉配線図 | トップページ | 本吉・小金沢・大谷・陸前階上配線図 »

コメント

「併合閉そく」の記事をありがとうございます。

文献等を列挙して下さっているのでたいへん助かります。

疑問点のところですが、以下のページに八戸線の侍浜駅での取扱いがレポートされており、参考になるのではと思います。

http://abiesresearch.web.fc2.com/jrlines/jr-e/hahese/samuraihama/samuraihama.html

管理人様 皆様 こんばんは。
併合閉塞の記事ありがとうございます。
技術的な用語に疎いので、ゆっくり理解していこうと思っています(汗)
⑤⑥⑦の文献は読んだ記憶があるのですが、もう一度じっくり読んでみたいです。ただ、絶版みたいで、入手が困難なのが…。
つい最近(と言っても10年以上前ですが)迄地元に残っていた併合閉塞の例、名鉄三河海線、谷汲線では、行灯式で通常の取り扱いか併合時の取り扱いかを示すものが設置されていました。もっともこの路線、併合閉塞の時間帯が長かったので併合閉塞の方が通常みたいな感じではありましたね。
併合閉塞時は中間駅となる三河平坂、北野畑共に発条転てつ機を使用しており、当然併合閉塞時は信号機は消灯していましたが、使用停止の表示(×印など)はなかったようです。
また宜しくお願いいたします。

規則に見る併合閉そく その1

閉そく区間併合は、運転取扱基準規程では本条に取り入れられましたが、その前の運転取扱心得では規定がありませんでした。
その代わりに、別途の通達によって運用されていました。

手元の門司鉄道局の資料をみてみます。
※資料の漢字は通用の字体に改めました。
*****

閉そく区間併合について
(昭和23年6月28日 鉄運保第258号依命通達)
 停車場従事員の勤務時間の関係で次の線区においては夜間通過列車のみを運転する間必要に応じて閉そく区間を併合する取扱を実施してよい。なお右以外の線区に対し必要ある場合にはその都度上申されたい。
1、閉そく区間を併合することのできる線区(閉そく区間併合線区という)を別表のとおり指定する。
2、閉そく区間併合のため一時閉鎖する停車場の転てつ器は列車を運転せしめる線路に開通してこれを鎖錠する。
3、信号灯は全部消灯する。但し、遠方信号機は鉄道局長が指定しこれを点灯のままとしてよい。
4、閉そく区間を併合する時機、これを所定に復する時機及び併合後に施行する閉そく方式は鉄道局長がこれを指定する。
5、閉そく区間併合のため一時停車場を閉鎖する場合においても踏切警手は勤務を継続する。この場合の連絡方は鉄道局長がこれを指定する。

別表
門司鉄道局
 長崎本線 肥前山口ー肥前濱
      肥前濱ー小長井
      小長井ー諫早
(他局関係は省略)

*****

他局関係も省略しないで欲しかったところです(笑)

上記通達に関する門鉄局の取扱方を「運転取扱細則」(昭和23年9月7日 門鉄達甲第182号)で定めています。

規則に見る併合閉そく その2

「閉そく区間併合について」(昭和23年6月28日 鉄運保第258号依命通達)通達に関する門鉄局の取扱方を「運転取扱細則」(昭和23年9月7日 門鉄達甲第182号)で定めています。
< >内は、表組を引用者がその内容を適宜書き改めたものです。

*****

第六編 雑則
第二百九十一条 この細則に対する暫定取扱方を次のとおり定める。
六 閉そく区間の併合
1 時間を限り閉そく区間を併合する停車場、併合時間、閉そく方式及び停車場構内の運転線路は、次のとおりとする。
<表組で、区間、併合運転する列車、運転線路、閉そく方式が書かれています。
肥前山口ー諫早間の、肥前山口、肥前濱、小長井、諫早各駅が閉そく区間併合後の閉そく区間分界停車場となっています。
各分界停車場の運転線路は「所定着発線」となっていて、一時閉鎖となる各停車場の運転線路は「上り本線」となっています。
併合運転する列車は肥前山口、肥前白石、肥前龍王、肥前鹿島各駅では「第三七二列車より第三七一列車まで」、肥前浜駅では「上り方面は第三七二列車、下り方面は第二五二列車より第三七一列車まで」、肥前七浦、肥前飯田、多良、肥前大浦各駅では「第二五二列車より第三七一列車まで」、小長井駅では「上り方面は第二五二列車、下り方面は第一三七五列車より第三九〇列車まで」、湯江、小江、肥前長岡、東諫早、諫早各駅では「第一三七五列車より第三九〇列車」となっています。
閉そく方式は、肥前山口ー肥前濱間は第一種票券閉そく式、肥前濱ー小長井間は第二種票券閉そく式、小長井ー諫早間は第三種票券閉そく式となっています。>
2 閉そく区間を併合せんとするとき、閉そく区間併合後の閉そく区間分界停車場(以下分界停車場という。)以外の停車場においては、次の取扱をしなければならない。
(一) 常置信号機は、上り列車に対する場内、出発及び通過信号機は反位、その他の信号機は定位のまま消灯して使用停止する。但し、遠方信号機のみは点灯せしめて置くこと。
使用停止した信号機に対しては、心得第三百三十九条の取扱はしない。
(二) 列車の運転線路に関係のある転てつ器は、全部駅長が転てつ器鎖錠金具で鎖錠し、鍵は鎖錠ある箇所に保管すること。
(三) 駅長は、閉そく区間併合の手配を完了したときは、隣接停車場駅長にその旨通告すること。但し、隣接停車場が分界停車場でないときは、更に両端分界停車場駅長にも通告すること。
3 所定の閉そく方式(以下甲方式という。)に復せんとするときは、相当時間前に隣接停車場駅長と最初に甲方式により運転する列車の運転状況を打ち合せの上、これが手配をすること。但し、隣接停車場が分界停車場でないときは、更に両端分界停車場駅長とも打ち合せなければならない。
4 閉そく区間併合に関する打合せをなした駅長は、打合時刻及び対手者の氏名を列車運転状況表の記事欄に記録して置かなければならない。
5 管理部長は、閉そく区間併合中、必要に応じ区間及び列車を指定して次の取扱をしてもよい。
(一) 甲方式により運転する最後の列車が遅延したため閉そく区間併合後の閉そく方式(以下乙方式という。)に替り、初めて運転する列車を遅延せしめる虞れがあるときは、乙方式により運転する列車を甲方式により運転せしめること。
(二) 乙方式により運転する列車が遅延したため、甲方式により運転する最初の列車を遅延せしめる虞れあるときは、これを途中停車場で行違いをせしめること。この場合、乙方式により運転する列車は、行違停車場より前途は甲方式に復して運転すること。
6 乙方式により運転する列車を臨時に甲方式により運転せしめるときは、分界停車場の駅長は、方式を変更した区間に進入すべき列車の機関士にその旨通告しなければならない。この場合、通過列車であるときは停止せしめてもよい。

*****

表組中の各列車の運転時刻は、時刻表復刻版等をお持ちでしたら、ご確認ください。

おそらく、このような通達が各鉄道局ごとに作られたものと考えられますが、本社から雛形が配られたことも考えられます。
KASAさんがご紹介くださった八戸線での取扱に共通するものがあります。

このようにして運用が始まった併合閉そくですが、約10年を経て、問題点も浮かび上がってきたようで、保安度向上のための通達が本社から出されます。

みなさん、こんにちは。
昭和50年だと思いますが、山陰本線米子管内の併合閉そく施行時に、駅を通過したことがありました。臨時「山陰いそ釣り号」で早朝に益田に向かう途中でした。
当時から通票の通過授受が大好き(笑)窓を開けてワクワクして見ておりますと、腕木は下がっておらず、灯りも消えたままの駅に右側通行で進入・・
無人の駅を通過し、唖然としていますと、進出側の消灯した場内・通過は下がっているのでした。
「ポイントを固定してるんだなー」
当時中学生の初体験でした。

KASAさん
ご紹介ありがとうございます。第2種機械ですとやっぱりてこにカギをかけるんですね。また、信号機に併合の表示がされるんですね。

NZさん
詳細な規定をありがとうございます。
保安度向上のための通達が気になります。

3RT生さん
小学生で「ポイントを固定してるんだなー」ですか・・・。双葉より芳しですね。

管理人様 皆様こんばんは。
NZ様、また貴重な資料をお示し頂きありがとうございました。
管理人様同様、保安度向上の通達がどんなものか、そのような通達が出される大きな事故が有ったのか、是非知りたいです。

少しですが、とあるサイトで併合閉塞の実態を見ましたが、3つ以上の区間をまとめる事案が結構多いのですね。 また閉塞区間をまとめるさい、例えば奈良線だと均等ではなくて、偏ったまとめ方をしていたりするのですね。こればかりは当時の列車本数や輸送状況が大きく関連しているのでしょうね。
また宜しくお願いいたします。

ご無沙汰しております。
閉そく区間の併合について、興味深く拝見しました。

併合閉そくの保安度向上については、以前Twitterに投稿したものがございますので、編集の上再掲させていただきます。


1958(昭和33)年2月24日18時25分。湧網線能取駅構内で当務駅長が誤って転てつ器を異方向に開通させたまま鎖錠し、列車が異線進入して留置貨車に衝突する重大事故が発生しました。

http://81r.in.coocan.jp/pics/no.jpg
事故概要図

当時の閉そく区間併合の取扱方は、旭川局の運転取扱細則により以下のように定められていました。
(1)場内信号機の使用を停止する。
(2)関係転てつ器は列車の運転する線路の方向に開通して、鎖錠金具によって鎖錠する。
(3)列車監視は行わない。

つまり全く駅長の注意力に依存していました。

そこで国鉄では、昭和34年3月運列第233号「閉そく区間併合の場合の保安設備について」を発出し、今後は「併合閉そくてこ」を設けてこれと信号機や転てつ器を関連させ、確実に進路を確保した状態で閉そく区間を併合することとするなど、人間の注意力から保安設備による安全へと移行し始めたのでした。


昭和34年3月運列第233号「閉そく区間併合の場合の保安設備について」
「中間停⾞場には閉そく併合てこを新設し、これを反位にすることによって通過線の進路を鎖錠する。(上・下いずれかの線を通過線として定め、これに対する出発・場内信号機を先引きとして反位に鎖錠する。出発信号機がない場合は転てつ機を直接鎖錠する。)
また同時に閉そく回線は現在の回線を両端の停⾞場に直通させる。この併合閉そくてこは反位とした後、鍵を抜いてそのてこを反位の状態に鎖錠する。

併合運転の両端停⾞場には、併合⽤の特設電話機を設け、⼩区間⽤閉そく器をスイッチによりこれに切換える。」


参考文献
運転事故通報 日本国有鉄道
鉄道信号発達史 1980.4 (社)信号保安協会

> てつ さま

事故例ありがとうございます。やはり異線進入だったのですね。

*****

一部重なりますが、話題になっている通達が、『運転取扱基準規程逐条解説』(伊多波美智夫・著 日本鉄道図書 昭和40年)に収録されていますので、まず同書の解説から見てみます。

*****

P.296
 閉そく区間を併合して運転する方式で事故防止上最も注意しなければならないことは、併合後、中間となる停車場における列車の運転線路を正当方向に維持するということである。この場合の中間の運転線路は、上り本線又は下り本線のいずれかに指定されるが、この進路の転てつ器は手動による鎖錠を行なつていたが、開通方向を間違えて鎖錠したため列車が異線に飛び込み事故を起した例があつた。
 これを防止するため、併合閉そくてこを使用し、列車の運転線路を確保するため次のような設備としている。

ーーーーー

閉そく区間併合の場合の保安設備について
(昭和34年3月12日 運列第233号依命通達)

 併合閉そく区間において最近数度の重大事故が発生した。これらの事故はすべて閉そく区間を併合する場合の転てつ器の誤扱いによるものである。よつてこれを防止するために通票閉そく式又は票券閉そく式の施行区間で閉そく区間を併合して票券閉そく式による場合は、下記のような設備方式とすることに定めたから、閉そく区間を併合している線区に対してはできるかぎりすみやかにこれを設備し、列車運転の安全を確保されたい。
 なお、今後閉そく区間を併合する場合はその際にこの設備方式を行なうを原則として併合するようにされたい。

1、閉そく区間を併合する停車場に出発信号機の設けてある場合には、併合閉そくてこを設けて、列車を運転させる線路に所属する場内信号機及び出発信号機のてこを反位とした後、これを鎖錠する装置とする。
2、閉そく区間を併合する停車場に出発信号機の設けてない場合には、併合閉そくてこを設けて、次の装置とする。
(1) 場内信号機のてこを反位とした後、併合閉そくてこを反位として鎖錠する。
(2) 信号機によつて鎖錠することのできない転てつ器は、併合閉そくてこで二種連動機(電気鎖錠器)によつて鎖錠する。
3、併合閉そくてこには、回路制御器を附設し、てこを反位とした場合、自停車場の通票閉そく機又は票券閉そく式特設電話回線を開放し、直通させる装置とする。
4、併合閉そくてこは、これを反位としたとき、かぎによつて鎖錠できる装置とする。
5、通票閉そく式を施行する区間で閉そく区間を併合した後の閉そく区間両端の停車場には、閉そく専用の電話機を設ける。この電話機はスイツチにより通票閉そく機用の電話回線と切り替える装置とする。

*****

 前出の逐条解説によれば、併合閉そく区間の延長は全国で6,538.7Km(昭和38年度末と思われる)だそうです。うち、併合閉そくてこ設置区間が3,822.8Km、かぎ鎖錠器設置区間が1,493.8Km、設備なし区間が1,159.9Kmだそうです。(なぜか、合計が合わない)
国鉄約2万キロの3分の1が併合閉そく区間だったことになります。

次に、運転取扱基準規程(昭和39年運達第33号)です。

*****

(閉そく区間併合の取扱い)
第153条 支社長は、自動区間を除き、次の各号により、夜間において時間を限って行なう閉そく区間併合の取扱いを定めることができる。
(1) 併合する線区をあらかじめ指定すること。
(2) 通過列車のみを運転する時間帯に限ること。
(3) 併合後の閉そく方式は、次の表によること。
<表組
併合前の閉そく方式      併合後の閉そく方式
連査閉そく式         連査閉そく式
連査閉そく式以外の閉そく方式 票券閉そく式>
2 前項第3号の規定にかかわらず、別に指示するまでの間、連査閉そく式施行区間で閉そく区間併合の取扱いをするときは、併合後の閉そく方式を票券閉そく式とすることができる。

*****

全線の3分の1が併合閉そく区間だった割に、運転取扱基準規程では、第153条の1か条だけの扱いで、詳細は支社に委任するかたちになっています。

次回は、支社(組織改編で名称は変わっていますが)の規程を見てみましょう。

 併合閉そくがこんなに多くの線区で使用されていたとは驚きでした。
 そもそもの始まりは中間駅の要員節減と聞いています。国鉄の勤務では、夜間4時間以上の睡眠を確保することで24時間勤務(例:0800~翌日0800)を可能としていました。
 列車本数の少ない線区ではダイヤに深夜4時間(準備を入れると実質5時間以上)の空白を作ることが可能ですが、どうしても列車を入れたいときは、併合閉そくに依っていました。
 併合を行わないと各駅に交代要員の配置が必要となります。
 でも、こんな保安設備が付帯するとは知りませんでした。設備投資する必要と効果があったのですね。(ね、は目上視線?)
 私が記憶しているのは、津山線の岡山→津山、福塩線の府中→塩町、芸備線の塩町→備後落合、です。併合距離は50kmを超え、中間駅は10駅以上です。いずれも夜行のスキー臨でした。
 併合閉そくが定期列車にも適用されたことがあるのでしょうか? 監督官庁が黙っていない気がします。

 上記の併合の記憶はいずれも当時は通票閉そくの区間でした。併合列車も通票を持っていましたから票券閉そくだったのでしょうか?
 現在は自動B・自動Cになっています。

てつさん、NZさん
併合閉そく施行時の事故の情報ありがとうございます。当初は併合閉そくてこは設けられていなかったんですね。本線上の転てつ器に対して何も連鎖関係がないわけですので、さすがにそれでは・・・、という気がします。

C6217さん
>併合閉そくんの定期列車への適用
これは普通にありました。列車本数が少なければ日中でも施行します。
>併合時は票券閉そく?
いろいろと例外もありそうですが、基本的には票券閉そくだと思います。

f54560zgさん、C6217さん
懐かしい津山線・・
岡山駅の津山・吉備線ホームの運転室に、通券函がありましたね。写真を撮りたかったのですが、言い出すのが恥ずかしくて(嘘つき・・笑)
津山線は岡山ー福渡ー津山の併合閉そく区間で、福渡滞泊の終・始発列車は併合閉そくでの運転でした。姫新線も併合閉そくがありました。

前に、運転取扱心得には閉そく区間の併合の条文が無いと書きましたが、その後調べたところ、昭和22年、昭和23年の運転取扱心得には条文がありませんが、大正13年運転取扱心得には、条文の追加として規定されていることがわかりました。
『運轉取扱心得 附列車運轉ニ關スル令達拔萃』(仙臺鐵道局 昭和十六年九月一日現行)から関係条文を抜粋します。
※漢字は通用の字体に、カタカナはひらがなに改めました。

運転取扱心得(大正13年12月達第913号)
第三章 閉塞
第一節 通則
第八十二条の二 時間を限り二以上の閉塞区間を併合して一閉塞区間と為さむとする場合は承認を得ることを要す

いわゆるの2条文ですから、心得制定後に追加されたわけですが、追加時期はわかりません。
これを受けて、仙台鉄道局では、次の達を制定します。
したがって、仙台鉄道局が局達を制定するまでには、追加されていたものと考えられます。

閉塞区間を一定の時間を限り併合する運転取扱方制定の件
(昭和8年10月26日 仙達甲第404号)
閉塞区間を一定の時間を限り併合する運転取扱方左の通定め昭和8年11月1日より之を施行す
本達施行と同時に昭和6年8月仙達甲第240号閉塞区間併合運転取扱手続制定の件は之を廃止す
閉塞区間を一定の時間を限り併合する運転取扱方
一、閉塞区間を併合せる区間にては平常の閉塞方式(以下原方式と称す)を一時中止し併合せる区間を別に一閉塞区間として票券式に通信閉塞式を併用(以下変更方式と称す)す
【註】一、原方式を中止したる場合其の方式が通票閉塞器式なるときは同閉塞器取扱心得第11条に依る使用停止の取扱を為すものとす
   二、原方式を中止したる場合其の方式が票券式なるときは通票を鎖錠ある箇所に保管するものとす
     原方式に戻したる場合変更方式に使用したる票券式の通票亦同じ

二、閉塞区間を併合するとき其の区間の中間となる停車場は左の通手配し且つ特に指定したる場合の外其の停車場を閉鎖したるものと看做す
 1、常置信号機の使用を停止す
 2、使用停止中の常置信号機の腕には運転取扱心得第141条の2に定めある木片又は白布を取付けず又運輸事務所長の指定したる停車場の場内信号機に対する遠方信号機は使用中止中と雖橙黄色現示の侭とす
 3、列車の通過線は上り下り共乗降場が相対式の停車場にては本屋(信号場の信号扱所を含む)寄の本線路、乗降場が島式の停車場にては本屋反対寄の本線路とす
   臨時に必要あるときは運輸事務所長に於て停車場及線路を指定して通過線を変更することを得
 4、列車の通過する線路上に在る転轍器は列車進行の方向に開通し総て其の尖端軌条をキーボルトにて鎖錠すること
 【註】 転轍器が錘柄式のものは勿論ハンドル附又は双動装置のもの等にして連動の設あるものと雖悉くキーボルトにて之を鎖錠すること
 5、転轍器標識及車止標識は夜間灯を消す
 【註】 列車の通過する線路に出る虞ある停留車両に対しては転動防止の手配を為すべきは勿論なるも少くとも左の取扱を為すものとす
  1、停留車両の車側又は手用制動機を緊締すること此の場合1線路に2以上の車両あるときは之を一連とし少くとも其の前後車両につき此の取扱を為すこと
  2、停留車両の在る線路の車輪止は必ず閉鎖すること若し車輪止の設なきときは枕木其の他を以て代用すること

三、閉塞区間を併合するときの取扱方は左の通とす
 1、併合区間の一端にして原方式に依る最終列車を出発せしめたる停車場の扱方
   当該列車が次の停車場に到著したる後同停車場と打合せ其の方面の原方式を中止し其の旨を運輸事務所の運転係(以下運転係と称す)に速かに通報すること
 2、併合区間の中間となる停車場の扱方
  (イ) 原方式に依る最終列車が自停車場に到著したるときは後方の停車場と打合せ其の方面の原方式を中止し当該列車が次の停車場に到著したるときは同停車場と打合せ其の方面の原方式を中止したる上前項各号の手配を為すこと此の場合当該列車が自停車場終著なるときは当該列車到著したるとき此の取扱を為すこと
  (ロ) 右の手配が完了したるときは其の旨を運転係に速かに通報すること
 3、併合区間の一端にして原方式に依る最終列車の到著せる停車場の扱方
   当該列車が自停車場に到著したる後後方の停車場と打合せ其の方面の原方式を中止し其の旨を運転係に速かに通報すること
 4、運転係の扱方
   前各号に依る通報を受けたるときは併合区間の両端停車場に対し閉塞区間を併合し変更方式を施行すべき旨を適当の時機に通報すること

四、中間の停車場に於ては前項第2号の(ロ)に依り運転係に対し手配完了せる旨通報したるときは直に閉塞区間が併合せられたるものと見傚し同係より第五項第2号に依り平常の閉塞区間に戻り原方式を施行すべき旨の通報ある迄は其の手配を変更することを得ず但し事故其の他の為已むを得ざる場合は運転係に於て駅長をして転轍器を使用せしむることを得るも使用を終りたるときは再び鎖錠せしめ速かに其の旨通報せしむるものとす

五、併合せる閉塞区間を平常の区間に戻すときの取扱方は左の通とす
 1、併合区間の一端にして変更方式に依る最終列車の到著せる停車場の取扱方
  (イ) 当該列車が自停車場に到著したるときは其の旨を運転係に速かに通報すること
  (ロ) 運転係より次号の通報を受くるを待ち後方の停車場と打合せ其の方面を原方式に戻すこと
 2、運転係の扱方
   前号(イ)の通報を受けたるときは併合せる区間の各停車場に対し平常の閉塞区間に戻り原方式を施行すべき旨を適当の時機に通報すること
 3、併合区間の一端にして変更方式に依る最終列車を出発せしめたる停車場の扱方
   運転係より前号の通報を受くるを待ち前方の停車場と打合せ其の方面を原方式に戻すこと
 4、併合区間の中間となる停車場の扱方
   運転係より第2号の通報を受けたるときは第二項各号に依る手配を原状に戻したる後関係の停車場と打合せ其の方面を原方式に復すること

六、変更方式に依り運転する列車が併合区間の中間となる停車場を通過するときの速度を一時間三十五粁以内に制限す

七、第三項第四項但書及第五項に依る通話の要項は運転原簿に記載するものとす

八、平常の閉塞区間にして併合するもの及併合後の閉塞区間、併合後の閉塞区間に於ける通票通券の種類は別表の通とす

九、変更方式に依り運転すべき列車は別に指定す但し臨時に必要あるときは運輸事務所長に於て之を変更することを得

一〇、併合せる区間に於ける変更方式に依る列車の運転整理は運転係にて為すものとす

一一、変更方式に依る通票を回付する必要あるときは之を封装し其の積たる列車名を回付先の停車場に予め通報するものとす

<別表は表組で縦5段、横3行になっています。右の行から
 1行目は最上段から、線名、平常の閉塞区間、併合後の閉塞区間、併合後に於ける閉塞区間の通票通券の種類、記事と記されています。
 最上段は、2行目3行目を結合し、磐越東線と記されています。
 2行目は2段目から、小川郷/川前/夏井/小野新町、小川郷/小野新町、第一種、空欄と記されています。
 3行目は2段目から、小野新町/神俣/大越/磐城常葉/船引/三春/舞木/郡山、小野新町/郡山、第三種、空欄と記されています。
 なお、/はその欄の中での改行を、空欄は何も記されていないことを表します。>

*****

取扱について、手取り足取り記した通達ですね。時折、漢文調が顔を出すのは時代を感じさせます。原文は旧漢字カタカナ文なので、いっそう漢文の感じがします。仙台鉄道局オリジナルなのか、本社や他局の雛形があったのかはわかりません。
閉塞方式の変更に運転係(現在の指令だと思われます)を関与させたところは、票券指令式とでも言ったところです。
昭和16年現行の資料で磐越東線に導入されていたことはわかります。この後の時局の中で、鉄道員も出征していき要員が逼迫するわけですが、線区がさらに増えたのか、研究をまちたいと思います。

新潟鉄道局の運転規程を解説した『新鐡中心 實用運轉法規』(二宮成彦・著 交友社 昭和15年)には、
「119. 一定の時間を限り2以上の閉塞区間を併合する場合の取扱方」という項目が立てられていて、5ページにわたって解説しています。
そして、関連する達として「昭12.7 新鉄達甲第552号 閉塞区間を一定の時間を限り併合する運転取扱方」をあげているので、新潟鉄道局管内でも閉塞方式の併合が行われていたことがわかります。
この本は解説書なので、各規定がなぜそのような規定になっているかが書かれていて興味深いのですが、長くなりますので、別の機会にゆずります。

NZさん
詳細な条文ありがとうございます。
少なくとも昭和8年にはあったものが昭和22年ではなくなっているというのも不思議ですね。また併合閉そくてこに関する記述がなく、事故に至った背景がわかります。単に信号機の使用を停止して転てつ器を鎖錠するだけでしたら設備の改修は最小限で済みますが、事故の発生により併合閉そくてこの設置という大掛かりな改修を行わざるを得なくなったんでしょうね。

bad.Ⅳh-95さんが紹介されていた「ぜかまし文庫」さんを見に行ったら、貴重な文献の宝庫でした。

その中に、『鉄道技術発達史』という、鉄道80年を記念して国鉄が刊行した書籍のPDFが収められていました。
同書の、第3篇 電気 第1章 信号保安 第5節 信号保安設備の合理化 2 合理化のための設備 (1)閉塞区間の併合運転 (125ー126ページ)
に、閉塞区間の併合の経緯が述べられています。

要点をまとめると、
①閉塞区間の併合の最初は、昭和3年の名寄ー幌延間である。
※長輪線(現在の室蘭本線 長万部ー東室蘭間)が開通した時に、運転系統の変更で夜間運転がなかった名寄ー幌延間に夜間の急行旅客列車を運転することになったため。

②鉄道省官房研究所の案が採用された。この案は
1. 併合される幾つかの閉塞区間の終始両端の駅に、別に併合運転用の通票閉塞機を加設する。
2. そして併合前の通票閉塞機と併合後の通票閉塞機との間には相当の連鎖関係をつけて、小区間用の通票と併合された大区間用の通票とが同時に取出されるようなことが絶対に起らないようにする。
3. 併合の場合閉鎖する中間駅では、予め転轍器を通過列車の運転に差支えないよう転換し鎖錠しておく。
4. 信号機は反位にしておいてもよいし、又消灯して使用しなくてもよい。
というものであった。
※原文は、図解入りで説明されています。

③この装置は札鉄その他でその後 2~3 区間で行われたが、余り広くは実施されなかった。

戦後の閉塞区間の併合の拡大を見ると、通票閉塞式を併合中は票券閉塞式にするという簡易な取扱を定めたこともあずかっているように思われます。

前に仙台鉄道局の規程を示しましたが、それによると「
閉塞区間を一定の時間を限り併合する運転取扱方制定の件
(昭和8年10月26日 仙達甲第404号)
閉塞区間を一定の時間を限り併合する運転取扱方左の通定め昭和8年11月1日より之を施行す
本達施行と同時に昭和6年8月仙達甲第240号閉塞区間併合運転取扱手続制定の件は之を廃止す」
とあり、短期間に規程が改廃されているのは、当初の大掛かりな方式から簡易な方式への移行を示唆しているのではないでしょうか。

NZさん
貴重な情報ありがとうございます。
閉そく区間を併合することのメリットが認識されて、これを実用化するにあたっての試行錯誤が行われた過渡期といった印象が感じられますね。

ぜかまし文庫さんが公開している書籍、取説、ホントに読んでいて楽しくなります。
中々、目からうろこ、というほど読み込めませんが。

bad.Ⅳh-95さん
ボリュームがスゴイです。

ぜかまし文庫さんに拘って済みません。最近、一番うれしかったのは、「鉄道技術発達史」の船舶編に、景福丸、宗谷丸、金剛丸の一般配置図が載っていたことです。金剛丸あたり、21世紀のフェリーとはまた違った船内の設備に憧れますね。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 志津川・清水浜・歌津・陸前港・蔵内・陸前小泉配線図 | トップページ | 本吉・小金沢・大谷・陸前階上配線図 »

過去の記事

2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ