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2019年4月14日 (日)

発条転てつ器の鎖錠 その1

発条転てつ器が設置されている停車場の連動図表を眺めていると、いろいろと「ン?」と感じるところがありました。
わかっているようで実はわかっていないんだなぁ、ということをつくづく感じた次第です(汗)。
というわけで、このあたりを具体的な実例を交えてお話していきたいと思います。
参考文献は 原英雄著 運転保安装置 昭和42年 です。
まず、機械式信号機と発条転てつ器の組み合わせの例として、伊予長浜駅の連動図表です。
63198603r
分岐器21に着目します。この分岐器の対向となる進路は下り本線と上下待避線の2つで、そのいずれもが21の定位側の進路です。
ということは、「これって連動機なくてもいいんじゃね?」が最初の「ン?」ですね。
まあ確かに列車の運転だけを考えれば21が反位に転換されることはないのでしょうが、実際には上り貨物線があるので入換の際は反位に転換されることもあると思いますので連動機は必要なんだと思います、あくまでもこの場合は
これについてはまた後ほど。
ところで、本線上に設けられた現場扱いの普通転てつ器には、
①先端軌条の密着を確保する手段
②関係する信号機との連鎖を行う手段
の2つが備えられます。
②は機械連動機であったり、電気鎖錠器であったり。
しかしながら発条転てつ器の場合は割り出しを可能にしなければなりませんので①が設けられません。ばねで押し当てているだけです。
ここで伊予長浜駅の連動図表をもう一度見てみますと、21の連動機に「甲3A」と書かれています。現物はこんな感じです。
(正確にはこれは甲3号Bなのですが、まあ基本は同じです(汗)。) 
19791003h02t
1979年10月3日、城端駅での撮影です。第23号転てつ器の脇に設けられたものです。
フタがしてありますが、おそらく中身はこんな感じかと。
1r

ここで信号てこ3を反位にするとこうなります。
2r
これを見て感じてしまうのは、「ひょっとして連動機で先端軌条の密着を確保できるんじゃね?」
上の写真を見ると、転てつかんの切り欠き部のアソビ(ガタ)はそれほど大きくないように見え、3を反位にした状態では3の信号かんにより23の転てつかんは程よく位置規制されそうな気がしてしまうわけです。もしそうであれば、②の連動機が①の先端軌条の密着の機能をも兼ね備える、ということになります。
反面、転てつかんが信号かんにより位置規制されてしまうということは、車輪が通過するときに先端軌条がバタついたら連動機が壊れてしまうのでは? 兼ね備えるどころか、「発条転てつ器に甲号連動機は使っちゃいけないんじゃね?」という気にもなってしまいます。まあそれ以前にこの程度のアソビでも問題になるのかもしれませんが。
実際、発条転てつ器にはそれ用のSP甲1号という特殊な連動機が主に使用されるようです。
それがこれ。
19800311b01
1980年3月11日、伊勢奥津駅での撮影です。信号機が2基あるので2つ並んでいます。
このSP甲号連動機について、冒頭の文献からその要旨をまとめたものを以下に示します。
図面をご紹介できませんでしたのでわかりずらいかとは思いますがご容赦下さい。
=========================
・経営合理化の線に沿って発条転てつ器が採用されるようになり、閑散な駅においてこれが使用されるようになった。
・発条転てつ器は発条の力によって尖端軌条を基本軌条におしつけているとはいえ、列車が対向でこれを通る場合には尖端が開口させられる心配があるので、発条転てつ器用の連動機をおいて信号機と転てつ器とを連鎖している。
・信号機が機械信号機の場合にはSP甲1号連動機を使用し、信号機が電気信号機の場合には電磁鎖錠器を使用する。
・SP甲1号連動機の変わった所といえば、尖端密着を点検する爪と信号かん不戻りを点検する爪がつけられた事である。
・転てつ器の不密着の場合は爪が信号かんに設けられたギザギザの切欠(ラック)に噛み合って信号てこが引けない
・反位に転換した信号かんを定位に復位しようとしたとき、もし信号かんが定位許容範囲(35mm)まで充分かえらなかった場合、転てつ器は解錠されていて背向運転による割り出しは可能であるが次の対向運転に対して信号てこを引こうとしても爪と信号かんのラックに噛み合って信号かんを反位に引くことが出来ない。
・甲1号の連動機を使用しても発条転てつ器に対する事故が防止できなかったので照査型連動機が新しく考案され、目下逐次これが甲1号に代わって設置されている。
・これは発条転てつ器を背向から割り出して列車が出発する場合、転てつ器の鎖錠が解けていることを知らせる表示灯を持っている。
=========================
機械的なからくりを設けて先端軌条が不密着の場合に信号てこを引けなくなるようにしているようですが、逆に言えば甲号では転てつかんが微妙に位置ずれしていても信号てこが引けてしまう、と読めるわけで、ということは、「発条転てつ器に甲号連動機を使用する場合は転てつかんの切り欠きのアソビを大きくしているんじゃね?」
いずれにせよ、SP甲号連動機では、直接的に先端軌条の密着を確保することはできませんが不密着時に信号てこを引けないようにしているわけですから、間接的ではありますが②でありながら①の機能も兼ね備えていると言えそうです。
もちろん入換作業時にはこの機能は働きませんが、その場合は先端軌条の密着を確認しながら作業する、ということでしょうか。
信号かんの不戻り対策については正直なところ意味がよくわかりません。「信号かんの戻りが不十分というのは、発条転てつ器に限った話じゃないんじゃね?」 信号かんが戻りきっていないのに転てつ器が解錠されるってどういうこと?」
どのような不具合を想定しているのでしょうか。
話を戻しまして、伊予長浜駅の場合はSP甲号連動機ではなく普通の甲号連動機と記載されています。
他にもこんなものがあります。
19800316f02et
1980年3月16日、信楽駅です。連動機は普通の甲2号のように見えますね。
19800406b13t
1980年4月6日、美濃本巣駅です。連動機は両側にあるのでしょうか? 転換機のすぐ左の箱は何?
  
話にまとまりがなくなり、何が言いたいのかわからなくなってしまいましたが、整理をすると「発条転てつ器に甲号連動機を使用するとどんな理由によりどんな不具合が起こるのか?」という一言になるのかと思います。
電気式の信号機と発条転てつ器の組み合わせについては次の機会にお話したいと思います。
配線図はt_yosiさんよりご提供いただきました。

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コメント

こんばんは。
画像を交えた解説、ありがとうございます。
伊勢奥津の照査型の連動機は電磁転てつ鎖錠器のような細長い型で、小生の馴染みの駅にもありました。他にも、甲号と同じ形のSP甲1号というのもあったはずで、文献でみたことがありますが現物を観察したことは残念ながらありません。
伊勢奥津の記事の最後に家城の信号てこを紹介されていますが、電気鎖錠器付きですね。出発信号機は進出側の発条転てつ器が解錠されていることを連動機で照査し、踏みボタンを踏んで電気鎖錠器を解錠し、てこを引くようです。ワイヤーを連動機まで取り回さなくてすみますので、ATS整備の関係か出発信号機が後年設置された閑散路線でよく見かけました。

いつも楽しみに拝見しています.

掲出された伊予長浜駅の21号分岐器に接続されている甲3A第二種機械連動機が鎖錠するのは,下り本線場内信号機(てこ番号1),上下待避線下り場内信号機(てこ番号2)および上下待避線上り出発信号機(てこ番号4)となります.連動図表上も,1・2・4番のてこの鎖錠欄に「21定位」が書かれ,てこ番号3にはそれは書かれていません.したがって,1・2・4番の信号てこが定位にあれば,21号分岐器は転換可能つまり割り出し可能となり,甲号第二種機械連動機を使用しても(いちおう)問題ない,となります.

掲載された連動機の図中で中央に条件として入れている上り本線上り出発信号機(てこ番号3)は,21号転てつ器の開通方向に関係なく反位とできるため,21号分岐器接続の連動機には条件を入れません.駅ホームの信号てこ扱い所のてこ番号3から延びる信号ワイヤは,23号分岐器の甲1号連動機を縫ってそのまま上り本線上り出発信号機に接続されます.

一方で連動図表を見ると,出発信号機と場内信号機間の連鎖は,信号扱い所における第二種機械てこ背面のてこ連鎖により実現されていることがわかります.

ここで,例えば下り本線場内信号機を反位から定位に復位した場合を考えます.下り本線場内腕木信号機のウエイトリバーが落下し信号ワイヤーを信号機側に引き戻しても,特に場内信号機は信号扱い所や第二種機械連動機から信号機までの距離が長い場合も多く,信号ワイヤが寒暖の影響を受けやすいため,第二種機械連動機の信号かんを定位まで引き戻しきれない場合が発生することがあります.この状態でも,下り本線場内信号機の信号てこ(てこ番号1)は定位にあるので,上り本線出発信号機の信号てこ(てこ番号3)は反位とすることができます.そのまま上り列車が出発し21号転てつ機を反位背向通過すると,甲3A第二種機械連動機は下り本線場内信号機の信号かんが定位に収まっておらず,21号転てつ機を定位に鎖錠していて割り出し不可能状態のため,破壊されることになります.

晩年の発条転てつ機を設置した第二種機械連動装置設備駅では,発条転てつ機設備の分岐器で使用する第二種機械連動機を,連動機内部の信号かんの位置を内蔵の爪に連動した接点で照査する照査形甲1第二種機械連動機として,その照査条件が定位の場合に解錠できる電気鎖錠器を出発信号機用の第二種機械てこに添装した構成とした駅がほとんどでした.この場合,出発信号機用の第二種機械てこの手前に設置された踏みボタンを踏むと,電気鎖錠器に照査型甲1第二種機械連動機の照査条件が入力され,信号てこ定位であれば鎖錠が解除されて,出発信号機用第二種機械てこを反位に取り扱うことができます.伊勢奥津駅のページの一番下に掲載されている家城駅の信号てこがこれに相当します.この場合,連動図表上では鎖錠欄の転てつ機の番号が太線の黒四角で囲って表示されます.

照査型第二種機械連動機には甲1しか存在しなかったようで,甲2,甲3相当の設備が必要な場合には,照査形甲1第二種機械連動機を複数台横並びに配置して使用していました.

なお,発条転てつ機を設備した交換駅には当初は基本的に出発信号機は設備されていなかった,と信号保安協会発行の「鉄道信号 機械編」に記載があります.このような駅では当初は場内信号機の信号かん不戻り状態での転てつ機割り出しを防止するためにSP甲1号が設備されていたようです.やがて発条転てつ機が割り出し可能状態にある際には,合図器や表示灯に割り出し出発可能であることを現示させるために,照査形甲1連動機を設置するようになったとのこと.さらにその後,3RT生様が書かれているように,その後,ATS整備により出発信号機を建植した際に,照査形甲1号第二種機械連動機は流用して,出発信号機用の第二種機械てこに電気鎖錠器を添装し,その条件を利用するようにしたものと思われます.

連投失礼します.

先に書いたコメントは,私の参照していた連動図表が城端駅のものでなく伊予長浜駅のものなので,いささか的外れなコメントになっていますね.リンク先までよく読んでからコメントすべきでした.失礼しました.

さて,記事本文に欠かれている,発条転てつ機使用時の第二種機械連動機の実際に事故例については,以下の記事に記載されていますので,参照されると良いかと思います.

・発条転てつ器と第二種機械連動機 (信号保安第6巻第8号)

信号かんはある程度切り欠きを大きくしていたようですが,転てつかんについては記載がありません.信号かんの太さに+5mmの切り欠きを転てつかんに設けるのが基本ですが,発条転てつ機の登場初期からこの遊びで耐えられていたのかは,もう少しいろいろ調べないとわかりませんね.

その後,SP型連動機の設置が進んだ後でも課題は多かったようで,

・発条転てつ器の鎖錠割出しとその防止策 信号保安第10巻第4号

など,いくつかの記事が業界誌に掲載されています.

なお,晩年の第二種機械連動装置設備駅でよく見られた照査形第二種連動機の動作については,

・照査形第2種連動機(発条転てつ機用) 信号保安第14巻第9号

に記載があります.

おはようございます。
ちです。

現在使用されている第2種継電連動装置の発条転てつ器には、電磁転てつ鎖錠器が設けられています。
対向に列車が進入する場合、開通方向にトングレールが密着していることを照査し鎖錠しなければ、進行を指示する現示は出ません。
また、背向で割り出す場合も、割り出しが可能な状態になっていることを照査しており、ロックピースが抜けている状態でなければ進行を指示する現示は出ません。
(今は、リミットスイッチで電気的に照査)

対向で、鎖錠されている転てつ器を正常に列車が通過したとき、振動などで、鎖錠カンがこすれて、まれに抜けない時があります。
その後、列車が背向で割り出した際に、鉄管などが破壊されてしまうので、
①背向は割り出し可能な状態の確認
②対向は鎖錠されたことの確認
を必ず行っています。

f54560zgさん、こんばんは。
照査形第2種連動機を用いていた、美作加茂駅の連動図表と連動機の画像などを、ようやく拙ブログに掲載できましたのでご笑覧いただければ幸いです。

3RT生さん、素晴らしい記事、ありがとうございます。そちらにコメントさせたいただきました。

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