八戸貨物駅配線図
個人的には八戸貨物駅は不思議な駅だったのですが、先日KASAさんから八戸貨物駅の配線図を拝見する機会を得て長年のナゾのかなりの部分が解明できたように思います(KASAさん、ありがとうございます)。
そんなわけで、八戸貨物駅の歴史を追いかけてみたいと思います。
(年表は停車場変遷大事典及びWikiを参考にしました。)
●1966年3月
青森県営専用線開業、分岐点として八戸線に北八戸信号場開設。専用線発着貨物を扱う。
国土交通省の1966年8月の空中写真を見てみましょう。
http://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=598475&isDetail=true
画面のやや右下、八戸線の線路用地が少し膨らんでいるところがありますね。このあたりが北八戸信号場っぽい気がします。
●1970年4月
北八戸信号場廃止。
●1970年10月
県営専用線がその後の八戸貨物駅まで延長。
信号場が廃止された後の専用線貨物はどうなったのか、延長された先の停車場の名前は何なのかが気になりますが、細かいことは置いておきましょう(汗)。
●1970年12月
八戸貨物駅開業。但し営業範囲は八戸臨海鉄道線連絡車扱貨物のみで実質的には信号場。
青森県営専用線廃止、八戸臨海鉄道線開業。
●1971年10月
一般車扱貨物の取り扱いを開始。
これで一応貨物駅としての体裁が整ったようです。
ところで停車場変遷大事典では八戸貨物駅は東北本線のページに記載されており、八戸線のページには記載されていません。ということは、「八戸貨物駅は八戸線ではなく東北線につながる停車場」というように受け取れますよね。
ここで1972年9月の空中写真を見てみます。
http://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=605989&isDetail=true
南が上になっていますのでご注意下さい。
八戸貨物駅の全体が見て取れます。東京方の出入り口は東北線ではなく八戸線からの分岐となっており、その先で八戸臨海鉄道授受線部と荷役線部とに分かれているように見えます。
荷役線群の青森方は「東北線につながる停車場」であれば本線とつながっているハズですし、実際つながっているようにも見えるのですが、荷役線群に架線が張られているような雰囲気はありません。
以下は1987年3月の八戸貨物駅の配線図です。15年経っていますが1972年の空中写真と比べても大きな違いはないように思います。
構内は大きく3ブロックに分かれていますね。
①東北上下線に挟まれた着発線部分
②東北線と八戸線に挟まれた荷役線部分
③八戸線沿いの着発線部分
①が何なのかよくわからなかったのですが、「鉄道による貨物輸送の変遷」によれば、1969年に設けられた青函船輸送の異常対応の列車抑留線5線だそうです。かなり特殊な設備だと思いますが、当時はそのようなものが必要だったのですね。
1969年であれば八戸貨物駅はまだ未開業ですので、設けられた当初は八戸駅の構内扱いだったのでしょうか。
②のうち、ライナー1、2番線は本線です。東京方に対しては直接列車としての発着が可能です。
しかしながら青森方は行き止まりとなっていて東北線にはつながっていません。前述のようにこの部分には架線が張られているようにも見えませんので、言ってみれば非電化の終端駅のような雰囲気です。先ほど東京方に対しては直接列車としての発着が可能と書きましたが、電化されていないのであれば八戸駅での機関車交換は必須となり、ライナー1、2番線を本線とする意味合いはかなり薄れてしまう気がします。
もともと青森方も東北線につなげる意思が感じられるレイアウトになっているだけに、なぜつなげられていないのかが不思議です。
③は八戸臨海鉄道線との授受が行われる部分だと思うのですが、ここでもよくわからない点があります。
八戸臨海鉄道線に出発できるのは八戸6番線だけなのですが、八戸駅方からは八戸6番線には進入できないんです。逆も同様で、八戸臨海鉄道線からは八戸5番線に到着するのですが、八戸5番線からは八戸駅方に進出できません。八戸駅方から列車として直接出入りできれば合理的な気がするのですが、そうはなっていないんですよね。貨車の授受はどのような方法で行われていたのでしょうか。
1988年の貨物時刻表から貨物列車のダイヤの一部を作成すると以下のようになります。
パッと見て感じるのは、東北線貨物列車を八戸駅に停車させて八戸貨物駅発着となる貨車の連結・解放を行い、八戸駅~八戸貨物駅間を小運転列車として輸送する、という形態がとられていたのではないか、ということですね。
3071列車は八戸貨物駅行きなのですが、機関車交換をしなければならないことを考えると同じようなものですね。
八戸貨物駅ではおそらくライナー1番線または2番線の発着だと思うのですが、5261列車は紙返空列車ですので八戸2番線あたりの到着かもしれません。
また、鉄道ダイヤ情報1988年12月号には1988年3月改正のDLの運用表が掲載されているのですが、これには八戸駅~八戸貨物駅間の小運転列車の牽引運用が見当たらないんです。これらは何が牽引したのでしょう? 単純なモレなのか、まさかの八戸臨海鉄道線のDLなのか・・・。
もう一つ、2000年7月の配線図です。
大きくは変わっていませんが、①の抑留線がなくなりました。青函トンネルが開通したためでしょうか。
●2001年1月
着発線荷役方式に改装。八戸運輸区が八戸駅構内から八戸貨物駅隣接地に移転。
2011年5月の空中写真を見てみます。
http://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=1226340&isDetail=true
http://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=1226391&isDetail=true
荷役線の青森方が本線とつながったようで、架線も張られているように見えます。開業から約30年でようやく本来の姿になったような気がします。
前面展望動画とGoogleマップから直近の配線図を描くとこんな感じです。
荷役線群の青森方が本線とつながったほか、東京方では八戸線との接続から東北線との接続に変更されています。
また、東北線と荷役線群との間の線群が移転してきた八戸運輸区のようです。
東北上下線間の線路の使われ方がよくわからないのですが、本線ではないようなので旅客車の留置用でしょうか。
2014年の貨物時刻表から貨物列車のダイヤの一部を作成すると以下のようになります。
当然ですが、東北線の貨物列車は直接八戸貨物駅に発着するようになって小運転列車は姿を消しています。
但し、八戸貨物駅に停車する貨物列車の数のわりに八戸臨海鉄道線の列車本数が多いのが気になります。どのような継送が行われているのでしょうか。
以上八戸貨物駅の歴史を追いかけてみましたが、改めて八戸貨物駅に関するナゾを整理してみます。
1)貨物営業を開始した1971年の時点で、なぜ終端駅の形態となったのか?
2)東北線~八戸臨海鉄道線間の継送と授受方法。
3)2001年1月以前の八戸駅~八戸貨物駅間の小運転列車の牽引機。
ご存知の方がいらっしゃいましたら教えていただけるとありがたいです。
配線図はKASAさんよりご提供いただきました。
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こんにちは。
八戸貨物が東北線所属の駅というのがなかなか興味深いです。2000年の図中、東北線の本線上に停車場区域標があるのが特徴的です。その部分が東北線の八戸貨物なのでしょうか。
投稿: やわやわとまれ | 2018年7月 8日 (日) 12時40分
やわやわとまれさん、停車場区域標についてはそういうことなのだと思います。その後また線路が敷設されて状況が変わりましたね。
投稿: f54560zg | 2018年7月 8日 (日) 17時52分
こんばんは。青函航路欠航時の貨物抑止用の設備ということで、東北本線の停車場なのですね。また勉強になりました。
信号扱い所が東北本線に正対しているのも特徴と思いました。操作卓が当初2つ描かれていますが2000年の時点では1つだけぽつんとあります。東北本線側のてこ扱いがなくなり、八戸線側のみ残ったように見えます。
青い森鉄道の分離で、JR側の施設は東北本線の東側に移ったのだと思いますが、現在の信号扱いはJR貨物の管轄になるのでしょうか。
投稿: 3RT生 | 2018年7月 8日 (日) 20時32分
f54560zgさん、八戸貨物駅の記事をありがとうございます。
東北本線の上下線に挟まれた部分が青函航路に関係する設備とは知りませんでした。ありがとうございます。
「鉄道ダイヤ情報 1999年3月号」の「臨海鉄道パーフェクトガイド」をみますと、JR八戸線八戸貨物~八戸間1.7kmの貨物列車牽引は、八戸臨海鉄道DD56があたっているとの記述があります。
当時の同区間は、単機も含めて8往復だったとのこと、また、臨海鉄道、JRの貨物列車ともに各列車、八戸貨物到着後、「編成をバラして組成替え」を行っており、八戸貨物駅の構内貨車入換作業も八戸臨海のDLの担当とのことでした。
別途、昭和61年3月15日現行の「盛岡鉄道管局列車運転特殊取扱基準規程」によれば、八戸貨物駅構内における入換作業は、「八戸本線及び八戸本線から分岐する構内並びに第380号転てつ器から分岐する構内での入換作業計画」は、国鉄駅の駅長が行い臨海鉄道の駅長に連絡し、入換作業は信号扱所で取扱うものを除き、臨海鉄道が行う旨、規定されており、少なくとも入換作業については、国鉄時代から臨海鉄道に委託されていたようです。
投稿: KASA | 2018年7月 8日 (日) 21時08分
3RT生さん、信号扱いはどうなるんでしょう?
第二種事業者でも行うのでしょうか?
スミマセン、よくわかりません(汗)。
KASAさん、情報ありがとうございます。八戸貨物駅開業当初はわかりませんが、国鉄時代から八戸臨海のDLが八戸駅に顔を出していたんですね。
投稿: f54560zg | 2018年7月11日 (水) 21時50分