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2017年9月 9日 (土)

時間鎖錠

先日、「ち」さんから時間鎖錠に関するコメントをいただきました。
ただ、それ以前に名無し信通区さんからいただいていたコメントと相反する部分もありましたので、個人的な見解を整理してみることにしました。

まず最初のアプローチは文献からの考察です。時間鎖錠についての解説がなされている資料を改めて調べてみました。

1つ目は森哲男・中村猛著「運転従事員のための継電連動装置の解説」。
この中では、下図のような例を掲げての説明がなされています。
R
細かいことは省略しますが、要は場内信号機1RBの防護区域の転てつ器31に対して時間鎖錠を設けた例について説明がなされています。
一方で過走余裕距離内の転てつ器に対する時間鎖錠については言及がありません。

2つ目は吉武勇著「わかりやすい連動装置・図表の解説」。
この中でも上と同じような図と説明がなされています。
但しこれに加えて
『過走余裕距離内の転てつ器についても時間鎖錠を付し対向の信号機等を定位におさえることもある』
との記述もなされており、さらに、
『時間鎖錠は次のような転てつ器に対して必要により設けることとなっている。
・主信号機または入換標識に進路鎖錠を設けることのできない場合の進路内または線路内の転てつ器
・主信号機の過走余裕距離内の転てつ器』
と記されています。
つまりこの文献では過走余裕距離内の転てつ器に時間鎖錠を設ける場合があることが表現されています(例は挙げられていませんが)。

以上のように、文献を見る限り過走余裕距離内の転てつ器に時間鎖錠を設けるケースはあることはありそうです。ただ、時間鎖錠の典型的な実施例として説明されているのは防護区域の転てつ器に時間鎖錠を設ける場合となっており、過走余裕距離内の転てつ器の時間鎖錠についてはレアケース的な印象を受けます。

次のアプローチは実在の駅の例です。
そうはいっても、進路鎖錠欄まで記載された連動図表は私もあまり知らないのですが・・・(汗)。

1)松任駅
19791001r
・進路鎖錠欄を見てみますと、1Rのところに「38但90秒」との記載があります。これはまさに時間鎖錠ですね。ただし38は1Rの防護区域の転てつ器です。過走余裕距離内ではありません。
・他の場内信号機の進路鎖錠欄には時間鎖錠らしき記載はありません。8Rに対する52は防護区域の転てつ器ですが、時間鎖錠は設けられていないようです。現場扱いだからでしょうか。

2)土山駅
19790830r
・見難い図で申し訳ありませんが、いずれの場内信号機の進路鎖錠欄にも時間鎖錠の表現はありません。
・6LAに対する52は防護区域の転てつ器ですが、やはり現場扱いだからでしょうか、時間鎖錠は付されていませんね。

3)亀岡駅
19790825r
・2Rに対して14に時間鎖錠が設けられていますが、やはり防護区域の転てつ器です。
・31も防護区域ですが、現場扱いのためか時間鎖錠は設けられていません。

このように、私の知る数少ない実例の中からは、防護区域の転てつ器に対して時間鎖錠を設けたケースは見られるのですが、過走余裕距離内の転てつ器に対して時間鎖錠を設けたように記載された連動図表は見当たらないんです。
しかしながら、本当に過走余裕距離内の転てつ器に時間鎖錠が設けられていないとすると、「ちょっとマズいんじゃないの?」って思ってしまうんですよね。
たとえば亀岡駅の3番線に列車Aが停車いている状態で京都方から3Rに従って2番線に列車Bが進入してきたとします。列車Bが11ロTを抜けたとたんに(もちろん3Rを定位に復した後ですが)14が解錠されたら、3番線からの列車Aの出発が可能となり、列車Bが過走した場合に列車Aと衝突の危険が生じます。そもそも過走した場合を考えて過走余裕距離内の転てつ器を鎖錠しているのに、過走する直前には解錠されてしまうというのには大きな矛盾を感じます。
ですので、「連動図表に記載されない時間鎖錠」というものが存在すると考えるのが自然と感じてしまいます。

あくまで個人的な見解ではありますが以上をまとめますと、、
・「時間鎖錠」という言葉を使用して表現される鎖錠は、例外はあるにせよ基本的には防護区域の転てつ器に対して付されるものではないでしょうか。
・そして、過走余裕距離内の転てつ器に対しては、解錠までに時素を設けるのがきわめて一般的であり、特に「時間鎖錠」という言葉が用いられることもなく、連動図表にも記載されないのではないでしょうか。
ということになります。
最も、単に私の知っている情報が古いだけ、ということなのかもしれませんが(汗)。

しつこいようですが、あくまで私見です。

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コメント

f54560zg さん、こんばんは。

吉武勇さんの平成18年9月発行の著書である「鉄道の運転保安設備」(財団法人 日本鉄道運転協会)の「時間鎖錠」の解説のところで、「主信号機の過走余裕距離内の転てつ器」に時間鎖錠が付される場合の例として、「ち」さんもコメントで触れられている、CTC区間の過走防護対策が、唯一、挙げられています。(112ページ)

上記書籍によれば、「時間鎖錠の応用例」として位置づけているようです。(114ページ)

停車場名は伏せられていますが、連動図表の例示もなされております。(150~151ページ)

単線のCTC区間にある停車場で、上下本線が合流する箇所の安全側線が設備された双動の転てつ器に時間鎖錠が付され、対応する場内信号機の進路鎖錠欄にそのことが記載されているようです。

あえて亀岡駅の例でいえば、中線(2番線)が存在せず、「場内信号機 2R」の行の進路鎖錠欄に、(13但30秒)、「場内信号機 4L」の行の進路鎖錠欄に、(11但30秒)と記載されているイメージでしょうか。

こんにちは。
三島の3Rの件について「過走防護の転てつ器に
関する時間鎖錠」と記載した理由について、単なる「時間鎖錠」という言葉だけでは何に対する時間鎖錠なのかわからなかったからです。
接近鎖錠、保留鎖錠、進路鎖錠などいろいろな鎖錠はありますが、時間鎖錠の「時間」というのは、時間以外に他の合理的な鎖錠方法がないために時間をもってすれば列車が停止した、又は、軌道回路を抜けきったと想定できるので、それを担保にしたというだけです。

ここで、他の合理的なというのは「軌道回路などを使用した方法」です。
要は、軌道回路で検知できない場合に時間鎖錠を設ける場合が多いです。

例でいうなら、
『進路鎖錠に時間鎖錠を付加した場合』
進路鎖錠欄の、(21T)(22T 30秒)(23T)と記載があったとします。これは、おそらく列車本数が少ないなどの理由で、レールに錆ができ、列車を検知できなかった場合には、ポイントが錯誤解錠などの重大な事故を引き起こす恐れがあるために設けられています。 これも一種の時間鎖錠です。
昔赤羽駅であまり使用しない線路(臨時とか検測車、保線作業など)で、レールの錆で列車検知できずにポイントが途中転換し脱線しました。この時の対策を通称『赤羽対策』と言っています。
『赤羽対策』=『進路鎖錠に時間鎖錠を付加した場合』
こんな感じですかね。

まっとう駅の
・『路鎖錠欄を見てみますと、1Rのところに「38但90秒」との記載があります。これはまさに時間鎖錠ですね。ただし38は1Rの防護区域の転てつ器です。過走余裕距離内ではありません。』
こちらの記載については、すでに答えは記載されています。

『時間鎖錠は次のような転てつ器に対して必要により設けることとなっている。
①主信号機または入換標識に進路鎖錠を設けることのできない場合の進路内または線路内の転てつ器
②主信号機の過走余裕距離内の転てつ器』

この 38 については、①が目的で設けられています。
1Rの信号機により列車が進入した場合、その列車の最終到着位置が1RTとします(下り本線ホーム停車)その時 5Rにより別列車が出発しようとすると、38 が反位で逆になります。
もし38まで、軌道回路により進路鎖錠したい場合」進路鎖錠欄が(31ロT)(1RT)(38T)などになってしまうと、進路鎖錠は結線上軌道回路ごとに順番に解錠されていくことになるため、1RT在線では、31は解錠されるが38は1RTに列車がある限り永久に反位になりません(進路鎖錠で鎖錠中)
つまり5Rの進路が構成できません。
ここで①の記載の通り、進路鎖錠が設けられないという状況になるのです。

KASAさん、ちさん、ありがとうございます。
ただ若干ボヤけてしまった感がありますので改めて確認なのですが、
場内信号機の過走余裕距離内の転てつ器って、進路鎖錠が解けた瞬間に解錠されてしまうものなのでしょうか、それとも何らかの鎖錠が付されているのでしょうか?
「解錠されるのであれば過走余裕距離内の転てつ器を鎖錠する意味がないのだから、何らかの鎖錠が行われているハズ。」と思うのですが、その「何らかの鎖錠」が設けられた事例をほとんど見かけたことがないのでこのような疑問が湧くのです。
KASAさんご紹介のような事例もあるのでしょうが、どちらかといえば特殊な事例であって、一般的なものではないように感じるんですよね。

『場内信号機の過走余裕距離内の転てつ器って、進路鎖錠が解けた瞬間に解錠されてしまうものなのでしょうか、それとも何らかの鎖錠が付されているのでしょうか?』

結論から記載します。
何らかの鎖錠はなく、解錠します。

『「解錠されるのであれば過走余裕距離内の転てつ器を鎖錠する意味がないのだから、何らかの鎖錠が行われているハズ。」と思うのですが、』

意味がないことはありません。
過走した場合に、(他の進路が構成されていない場合)転てつ器の割り出しによる分岐器の破壊、列車の脱線が防げます。
現地に扱い者がいる場合に、過走している、過走しそうにも関わらず前押さえの分岐器が転換する他の進路を構成することはありません。
ここは、人によるソフト面でのカバーです。

『特殊な事例であって、一般的なものではないように感じるんですよね。』

現地に信号扱い者がいる昔と違い、今は特殊ではなく一般的です。
今は、CTC、SRC、PRC、運行管理システムなど一括で中央から制御しているので、現地に人がいない駅が多いため、過走しているのか、停車したのかが現認できないので最近の連動図表では記載されています。
(CTCとかでも昔ながらの設備を引き継ぎ、設けられていない駅もありますが・・・。)

少し電気結線図について、わかる方もいるかもしれませんが記載します。
(大きな図書館やネットでも標準的な結線図を見つけることができます)

仮想の駅

下り場内信号機 1RA
内方の分岐器 21 22
ホームトラック 1RAT
過走防護の転てつ器 26


信号制御欄
1RA→21定位 22定位 26定位

進路鎖錠欄
(21T)(22T)

とします。

(ここからは継電器、リレーの動き)
1R てこ反位 着点ボタンA 押下⇒1RAR動作
転てつ鎖錠リレー 21WLR 22WLR 26WLR動作⇒ 21、22、26定位に転換
21KNPR 22KNPR 26KNPR動作

接近鎖錠リレー1RASR落下⇒順に右方向進路鎖錠リレー21TRSR落下(21WLR落下で21分岐鎖錠)⇒22TRSR落下(22WLR落下で22分岐鎖錠)⇒同じ最終の進路鎖錠リレー22TRSR落下(過走転てつ器26WLR落下)※ここが過走の転てつを鎖錠するところ

列車が下2T⇒下1T⇒21Tと進む。
21T進入で、場内信号機1RA復位(定位)
続いて、22T進入⇒21T抜ける⇒進路鎖錠リレー21TRSR動作(21WLR動作 21分岐解錠)⇒1RAT進入⇒22T抜ける(22TRSR動作)⇒同時に(26WLR動作 26分岐解錠)※ここ重要、時間鎖錠が付加されると、ここの回路の次に時素リレー回路を設ける!

と、こんな感じです。
言葉だけでの記載では難しいので、紙とえんぴつがいりますね(笑)

上について間違いです。

×信号制御欄 ⇒ ◎鎖錠欄
1RA→21定位 22定位 26定位

ちさん、ありがとうございます。
そうですか、連動図表に時間鎖錠が記載されていなければ解錠され、そしてまた最近の停車場では連動図表に時間鎖錠が記載されているのが一般的なわけですね。

f54560zgさん、ちさん、時間鎖錠についてたいへん勉強になりました。ありがとうございました。

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