手動の転てつ器 その3
転てつ器に関するお話の第3回目です(今回で最終回かも)。
今回は、現場ではなく少し離れた信号扱所から手動で転換する(てこ集中)転てつ器についてです。
この場合の転てつ器においても、
1)先端軌条を動かす。
2)先端軌条を基本軌条に密着させる。
の2つの機能が要求されることには変わりありません。
てこ集中の場合は、てこと転てつ器が離れているという不利な条件(たとえば温度の影響等)に対処するため、現場扱いの場合よりもより高度(?)なしくみが設けられていたようです。
(「~ようです」と書いたのは、そのような記載がされた連動図表の実例を確認できていないからなんです。ですのでこれ以降の記述はそこそこ推定が含まれます。詳しい方がいらっしゃいましたら教えて下さい(汗)。)
具体的には、先の記事で書きました通り現場扱いの転てつ器や電気転てつ器においては上記の2つの機能を1つの動作の中で満足するような機構が用いられているわけですが(単式)、てこ集中の場合は2つの動作に分けて行われていたようです(複式)。
つまり、1つの転てつ器に対しててこが2本設けられており、1本は動作用、もう1本が鎖錠用、というわけです。
そして転てつ器を転換する際は、
①(必要に応じて)鎖錠用のてこを操作して解錠し、
②動作用のてこを操作して転換し、
③(必要に応じて)鎖錠用のてこを操作して鎖錠する。
といった手順を踏むことになります。
ですので取り扱いは面倒です。信号掛さんの負担は増えますね。
イメージとしては下図のようになります。
実例です。
・金田駅です。
・田川伊田方に信号扱所が設けられています。
・どうも電気機連動っぽく、信号機は電気式(色灯式)ですので、信号扱所からは転てつ器を操作するロッドだけが伸びています。
・信号扱所から伸びる2本のロッドが1つの転てつ器につながっています。
・1本が動作用、1本が鎖錠用だと思うのですが・・・。
・こちらも同様です。写真中央の転てつ器に2本のロッドがつながっています。
・ただしこれらの写真からはどれが転てつ器鎖錠装置なのかはよくわかりませんね(汗)。
・また、写真左側の転てつ器にはロッドが1本しかつながっていません。重要度合いに応じて単式と複式が使い分けられていたようです。
動作に関しては二本木駅の実例を。
https://www.youtube.com/watch?v=AzzfoAs36zk
の中で、
①3分5秒あたり、Aの転てつ器で、まず転換、続いて鎖錠が行われています。解錠が行われていないところを見ると、もともと鎖錠されていなかったんでしょうね。
②4分30秒あたりで同じくAの転てつ器で、まず解錠、続いて転換が行われています。その後Bの転てつ器でもいったん転換が行われますが、すぐに元に戻されていますので多分操作ミス? またBの転てつ器については解錠がなくいきなり転換していますので、Aは複式、Bは単式なのかも知れません。
もうひとつの実例です。
・野村駅です。
・谷川方に信号扱所が設けられており、信号機及び主要な転てつ器はここで操作されます。
・こんな感じで信号機を操作するワイヤーと転てつ器を操作するロッドが伸びています。
・これは単式ですね。ロッドが1本しかありません。エスケープクランクがあって、転換鎖錠装置があって、現場扱いのロッドを単純に信号扱所まで伸ばしただけの形態ですね。
・これは同和鉱業大館駅の連動図表です。
・第1種機械丙なのですが、各転てつ器に対して転てつてこの番号は1つづつしか記載されていません。これも単式なのか、それとも鎖錠用のてこは連動図表には記載しないルールなのか・・・。
オマケその1
・加太駅です。
・これはロッドではなくワイヤーで駆動するタイプ。珍しいと思います。
・中の構造はわかりませんが、外観からは電気転てつ器のローラー部をワイヤーで回転させているのかな、と想像してしまいます。
オマケその2
・美濃太田機関区です。
・転てつ器ではありませんが、てっさかんの取り扱いってどうなっているんでしょう?
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温度差に関してはコンサベーターとかW形クランクという仕掛けで信号鉄管の伸縮を吸収する様になっていますね。
実際の電機連動(かなぁ)っぽいもの、というと20世紀中の名古屋第1機関区、というか名古屋車両区がそうでした。向野橋の上から眺めていると、信号扱所の2階でえっちらさ、とテコ扱いをしていました。
>デテクターバー
分岐器の取り扱いと平行して動くみたいです。分岐器上に車両が残っていると、一旦軌条面上まで持ち上がって移動するてっ叉棹が車輪にぶつかって動けなくなり、分岐器が転換できなくなる、という仕掛け、のようです。
で、てっ叉棹の長さが12.5㍍となっているので、相隣り合う車輪同士の間隔は12.3㍍を限度とする、となっていて、キハ55以降の気動車の台車間隔が14.4㍍を標準としているのは、DT22台車の軸距離が2.1㍍だから、だそうです。
投稿: bad.Ⅳh-95 | 2014年12月31日 (水) 17時31分
bad.Ⅳh-95さん、信号扱所は大抵2階にあるので地上からはなかなか中の様子は窺えないですよね。ところで向野橋、2010年7月に訪問した時は「老朽化による損傷のため当分の間車両通行止め」(歩行者・自転車・原付のみ通行可)となっていましたが、その後どうなったんでしょう。
なるほど、デテクターバーは転てつ器のてこで動くわけで、それ用のてこがあるわけではないんですね。ありがとうございます。
投稿: f54560zg | 2014年12月31日 (水) 20時35分
ただ、てっ叉棹については、取り扱った上で転轍器を転換する、と読める書き方をしている物もあって、済みませんが、もう少し詳しい方に説明をお願いしたいところです。
>向野橋
歩行者、軽車両の通行は出来るようですね。 もう10年位行っていないし。
投稿: bad.Ⅳh-95 | 2015年1月 1日 (木) 12時33分
>加太駅
坂本衛さんの著作と手元の他の資料で表現が違うのですが、もしかしたら、これはエスケープ式転換器を線条で遠隔操作できるようにした物では無いでしょうか?
カタログ写真くらいしか見たことがありませんが、こんな今川焼きみたいな代物に把手が付いていて、それを持って転換するようですが、把手が低く倒れる上、定位・反位の確認が離れたところからは難しいので、余り使われていない、と説明のあるブツに似ているのですが・・・
投稿: bad.Ⅳh-95 | 2015年1月 1日 (木) 14時02分
ww.signalbox.org
イギリスの信号についてのサイトです。
機械式信号の嵐なので、デテクターの解説も有りそうなんですが、解読できていません。
投稿: bad.Ⅳh-95 | 2015年1月 2日 (金) 13時18分
連貼りで申し訳ありません。探せば出てくる、ネットとは便利ですね。
本来は他の論文だと思いますが、デテクターバーについてきちんと押さえています。
dlisv03.media.osaka-cu.ac,jp/infolib/user_contents/kiyo/111C0000001-70.pdf
投稿: bad.Ⅳh-95 | 2015年1月 2日 (金) 15時48分
bad.Ⅳh-95さん、
>加太駅の転てつ器
エスケープ式転換器については私も図面だけですが見たことはあります。ただその考案理由が「錘付転換機における対向運転時の先端軌条開口防止」のようで、その改良版がポイントリバーS型のようですので、ちょっと違う種類のものかな、と思っています。
>デテクターバー
情報ありがとうございます。文献の図面を見て、おおよその構造が理解できたように思います。別途記事を書きますね。
投稿: f54560zg | 2015年1月 4日 (日) 17時25分
加太駅構内の今川焼き風の転換器ですが、グループ式ポイントリバーの解説図に似ているんじゃないかと思います。
球形エスケープクランクと斜形ローラークランクを組み合わせ、云々と、「信操技術の解説 ~駅を中心とした運転取扱技術作~」(株)中央書院 1967刊には解説があります。
投稿: bad.Ⅳh-95 | 2015年1月10日 (土) 14時35分
bad.Ⅳh-95さん、「グループ式ポイントリバー」ですか? スミマセン、初耳ですね。どんなものなんでしょう。
投稿: f54560zg | 2015年1月11日 (日) 14時08分
今川焼き、やっぱ違いますかねぇ・・・
ただ、この格好でワイヤー駆動、というのも理解できないし。
あと、エスケープ式として説明されている転換装置の画像がこちらのサイトにありますが、よくよく見ると、加太駅の今川焼きとはちがいますし・・・
http://www.lazyjack.co.jp/home/non.php?catid=36
投稿: bad.Ⅳh-95 | 2015年1月11日 (日) 15時12分
bad.Ⅳh-95さん、個人的な想像ですが、動作かんや鎖錠かんのあたりは電気転てつ器と同じカタチをしていますので、中身は電気転てつ器と同じようになっているんじゃないかと。ただローラーを回転させるところがモータではなく手動(ワイヤ)になっている・・・、違うかなぁ。
投稿: f54560zg | 2015年1月11日 (日) 20時58分
初めて書き込みいたします。
かつての配線図や信号設備機器等、折に触れて興味深く拝見しております。
もう10年近くも前ながら、機械転てつ装置の保全も見よう見まねでやった経験があったこともあり、思い切って書き込ませていただきました。
まず金田駅の
http://senrohaisenzu.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2014/12/28/2319860807f04.jpg
ですが、写真奥のロッドは鎖錠のリバーに、手前のロッドが転換のリバーに接続されています。
私の知る限り、鎖錠機構はトングレール先端側に設けるのが常ですし、小さいですが転てつ鎖錠器(複式鎖錠用はB310-Aとか言いましたか…)のようなものも見てとれます。
手前のロッドはエスケープクランクを介してスイッチアジャスタにつながっています。
転てつ鎖錠器とエスケープクランクを組み合わせた方式を「エスケーププランジャ」と称するようです。
次に、加太の「今川焼き」は「転換鎖錠器(鋼索用)」です。
ワイヤで転てつ器を操縦するときに使う転換鎖錠器で、まったくご想像の通り、電気転てつ機の鎖錠機構がほぼそのままワイヤで駆動するものです。
私も本物を見たことがないので詳細はわかりませんが、定位または反位の位置でワイヤが断線するとワイヤホイールの中にある鎖錠器の働きでその位置でホイールが固定される仕組みだそうです。
参考文献:鉄道信号 機械編(1968)
投稿: てつ@ち鉄局 | 2015年1月20日 (火) 23時08分
てつ@ち鉄局さん、はじめまして。
私は機械的に転てつ器を遠隔操作する駅にはほとんど遭遇できませんでしたので、いろいろと詳しい情報をいただきありがとうございます。
投稿: f54560zg | 2015年1月25日 (日) 18時07分