碓氷峠列車ダイヤ(アプト廃止前後)
前回までの記事でアプト廃止前後での丸山信号場・熊ノ平駅・矢ケ崎信号場の線路配線の変化を見てきましたが、今回は列車のダイヤを見てみます。
1.1963(S38)年5月 アプト単線時代
鉄道ピクトリアル1997年8月号に1962(S37)年10月改正のダイヤが掲載されておりますので、これをベースに時刻表1963(S38)年5月号の内容を加えて粘着新線開業直前の様子を作ってみました(ただし7時から19時までの間のみです)。一部推定が含まれますが、およそはこんなものかと。
・見事なネットダイヤですね。輸送のネックになっている状況がよくわかります。
・赤線は列車ではなくバスです。「軽井沢」という名前の、名目上は上野~軽井沢間の準急列車が設定されており、実態としては上野~横川間は電車列車(80系)、横川~軽井沢間は専用の連絡バスで運転されていました。80系は多分6両だと思うのですが、連絡バスはいったい何台が連なって走ったのでしょう。
・横川駅~軽井沢駅間の所要時間は列車もバスも大差ありませんね。
・また、8時台に試1091列車~試1092列車なる妙な列車があります。1962(S37)年6月には丸山(信)の先1.7kmまでの新線が完成していますので、これは粘着新線の試運転もしくは工事用の列車ではないかと思われます。
2.1963(S38)年8月 アプト・粘着単線並列時代その1
時刻表1963(S38)5月号と同8月号を比較しますと、7月15日から粘着新線経由で延長運転を開始した準急「軽井沢」以外の旅客列車は運転時刻が同一ですので、この時点では粘着新線経由の旅客列車は準急「軽井沢」のみと考えられます。貨物列車についてはひょっとしたら粘着新線経由に変更されたものがあったかもしれませんが、ここではとりあえずアプト線経由のままとします。
・青線が粘着新線経由列車の準急「軽井沢」です。アプト線に比べて粘着線ではスジの傾きが違いますね。
・この準急「軽井沢」は粘着新線の開通と長野電化(1963(S38)年6月21日)の完成により基本的にはそれまでの上野~横川間の列車を延長したものなのですが、単純に延長されただけではなくちょっと複雑です。これについては別途記事にします。
3.1963(S38)年9月 アプト・粘着単線並列時代その2
7月15日の時点で粘着新線経由となった列車は上記の準急「軽井沢」のみであったようですが、その後は既存の列車も段階的に粘着新線経由に切り替えられていったようです。
たとえばRM LIBRARY 40のP10には熊ノ平駅に掲示された以下のような内容の張り紙の写真が掲載されています。
「9月14日から下記列車1部時刻変更になり新線により運転されますからご注意下さい。」
これに続いて書かれているのは322列車、326列車、316列車、337列車、327列車、313列車、323列車、325列車のいずれも普通列車8本の列車番号とそれぞれの変更後の発車時刻なのですが、写真の説明書きとして「優等列車から始まった新線移行は、ついに普通列車にも及ぶことに。」と記述されていますので、一部の優等列車はこれ以前に粘着新線経由に切り替えられていたのかもしれません。
ここではとりあえず上記の8本の普通列車のみを時刻変更の上粘着新線経由に変更しますと、ダイヤは以下のようになります。
・青線が粘着新線経由です。
・ここで注意は丸山信号場~熊ノ平駅~矢ケ崎信号場間の線路配線です。
アプト単線時代は
のような感じだったわけですが、単線並列になって
のようになりました。
アプト線を走る下り列車と粘着線を走る上り列車との関係は
のように複線区間と全く同じ状況となりますのですれ違いに対して気を使う必要はありません。
ところが粘着線を走る下り列車とアプト線を走る上り列車との関係は
のようになっていろいろ競合が発生します。特に熊ノ平周辺で見ますと、アプト単線時代は「熊ノ平構内だけでしかすれ違いができない」状況であったものが、単線並列になって「熊ノ平構内だけはすれ違いができない」という、全く逆のパターンになりました。
ですので先の粘着新線経由に移行する8列車のうち特に下り列車は、それまでは熊ノ平で上り列車とすれ違うダイヤになっていたものを、熊ノ平以外ですれ違うように時刻変更されていることがわかります。
また、丸山(信)~矢ケ崎(信)間では粘着線の列車同士のすれ違いができませんので、この点も配慮しながら粘着線への移行が行われたものと思われます。
4.1963(S38)年12月 粘着単線時代
鉄道ピクトリアル1997年8月号掲載の1963(S38)年10月改正ダイヤと時刻表1963(S38)年12月号からダイヤを作成すると以下のようです。
・熊ノ平駅の配線が変更されて粘着新線の列車同士が熊ノ平駅で交換できるようになりました。
・スジがたって本数が増えました。この範囲の下りだけでも17本から23本に増加しています。
・ただし見事なネットダイヤであることには変わりありませんで、あいかわらず隘路であることには違いないようです。
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