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2014年9月14日 (日)

碓氷新線と165系

碓氷峠の粘着新線が開通した時、何で165系が使用されずに80系が使用されたのか、という疑問に対し、コメントをいただきありがとうござます。

もう一度趣味誌を調べなおしてみたところ、以下のようなものが見つかりました。

●鉄道ピクトリアル1993年1月号
P17に「横軽の思い出-アプト式廃止の頃」という記事があり、その中に以下の記述があります。
・「試作車による性能試験の検討会を38年2月に行った結果、次の事項が問題点としてあげられた。
(中略)
(7)牽引定数は客車列車、貨物列車は45、電車列車は6M5Tが妥当である。
(中略)
(10)訓練運転開始は38年5月16日、新線運転開始は4~5往復程度で38年7月15日とし新旧両線を併用する。」

1963年2月の時点では7月15日からの粘着新線には6M5Tの電車列車を4~5往復程度運転する予定だったようです。電車の形式は記されていませんが、6M5Tというと165系のMcM'TsTcMcM'TsTcMcM'Tcのような編成を想像してしまいます。80系っぽくはないような・・・気のせいでしょうか(笑)。

・「また、従来信越線に使用していた80系電車を置換える165系は約2カ月間は旧線の600V区間に乗り入れる必要が生じるため、2月12日及び3月7日に新前橋-高崎-横川間で試験を行った。その結果、
(1)電動発電機関係では低電圧継電器がオフになるので、室内灯及び扇風機を使用するために起動抵抗の一部の短絡と調整値を変更する必要があり、また異電圧セクション通過時の整流装置のブレーカーがトリップするので復元スイッチを整備する必要がある。
(2)EF63形機関車との間の電気連結器は長さを増す必要がある、ことが判明した。」

従来信越線に80系電車が走っていたのかどうかは微妙ですが、1963年3月の時点では165系を600V区間に乗り入れるためにはMGとジャンパ栓周辺で何らかの改造を施す必要があることが判明したようです。ジャンパ栓の問題と600V乗り入れが関係あるのかどうかはちょっと疑問ですが。

・「ところがここで新たな問題が持ち上がった。4月30日(注:1963年)は火曜日であった。(中略) 聞けば訓練運転中31k600付近で暖房車の自動連結器の肘が割損したという。(中略) 早急に手を打たなければならない。(中略) 早速自連力試験計画が練られ貨物列車は316トン、368トン、419トンの各牽引重量について6月7~9日に、電車は6~9両編成について11~13日に、それぞれ試験が実施され(中略) 車両面および操縦面からみた安全対策が検討された。」

1963年2月時点では6M5Tであったものが、この時点では6~9両編成にトーンダウンしてしまったようですね。

・「5/20にEF63に6M3Tの165系電車を連結して下り勾配を抑速33キロで走行し、機関車から非常制動をかける試験を行ったところ、停止直前に機関車寄りクハ165-17号の軽井沢方台車が抜けるという現象が起こった。(中略) これらの対応のため、車種別に改造計画がつくられた。改造の狙いは車両相互間の衝撃力の緩和を図って連結器の切断を防止すること、浮き上がりや偏倚を最小にして脱線を防止することである。(中略) 改造件名は次のとおりである。(中略)
電車
 車掌弁に絞り取り付け(80系、165系)
 台枠補強(80系、165系)
 台車の横揺れ制限機能付与(80系、165系)
 制動制限装置取付け(80系、165系)
 抑速制動回路変更(165系)」
(中略)
これらの改造を終え、効果を確認し、練習運転を終えてから営業運転に入ることとしたため、7月1日の理事会の決定により7月15日の新線運転開始は80系電車2往復となった。」

最後は唐突に80系電車2往復という結論ですね。

●鉄道ジャーナル1968年8月号
P5に「碓氷峠概史」という記事があり、その中に以下の記述があります。
「ところがここに思わぬ伏兵がひそんでいた。新形式-粘着性能の飛躍的向上と絶対のブレーキ力を持つと称されたEF63×2に、試運転列車(電車10両)を引かせて各種テストをしてみると、勾配途中でブレーキをかけたとたん、(中略) いわゆる「列車垂直面内座屈」という現象を起こしたのである。(中略) この調子では自連破損や(中略) 脱線の原因ともなりかねないということが明らかになった。(中略) ことここに至っては、(中略) 電車は8両(中略) と定めて38年7月15日(全面切替は10月1日)から粘着式機関車EF63と新線による営業を開始」

・座屈に係る問題は編成両数を短くすることで対応したということでしょうか。そうであればこれは165系固有ではなく80系にも共通する問題のようですね。

以上整理しますと、結論は「よくわかりません(汗)」なのですが、165系を粘着新線に乗り入れるために対応が必要と判断されたのは、上記文面からは
①MG
②ジャンパ栓
③車掌弁
④台枠補強
⑤台車の横揺れ制限機能
⑥制動制限装置
⑦抑速制動回路
のようですが、③~⑥は165系だけでなく80系にも共通する事項です。
文面からはこれらの対応を行えば165系でも粘着新線での走行が可能なように思えるのですが、結果としては時間的な制約によって7月15日には間に合わなかったということなのかもしれません。

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コメント

急勾配区間では例外無く動力車を麓側にトレーラーを山頂方向に連結するのが徹仄です連結器への負担が最大の理由です其の為横カ横軽用165系は他線用とは逆に向いてました 麓側に動力車を集める徹仄に即したのです
スイスアルプス等の登山鉄道でも麓側に動力車を連結するのが当たり前です ユングフランへ向かうWAB鉄道は峠を越えるのでサミットの駅でスイッチバックする形で麓側に動力車を向けるのです
例外的には箱根登山鉄道が碓氷峠より急勾配ですが当初より粘着運転を採用してますが全電動車ですので問題は無かったのです

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