稲沢の貨物列車運転ルート その1
ハンプヤードにおいてはハンプの散転が一方通行となるために、ヤード全体としても貨車の流れが一方通行になるようなレイアウトがなされています。
すなわち、川に例えれば、まず上流側に到着線を配置し、下流に向かってハンプ・方向別・駅別仕訳線とつながり、もっとも下流側に出発線が配置されるのが基本的なパターンになります。
稲沢もこのパターンで全体がレイアウトされており、神戸方→東京方への一方通行になっていますので、列車の運転ルートを調べながらこのあたりを見てみたいと思います。
最初に車扱貨物がバリバリだった1967年1月の配線図を例にとり、次に参考までに、ヤード機能が廃止された後はどうなったのかについても2006年4月の配線図で調べてみたいと思います。
今回は1967年1月、下り列車についてです。
まずは到着ルートから。
・東京方から来た列車は、まず下り第1場内信号機150LA/150LBを通過します。
・その右下に記載されているとおり、150LAは貨物下り本線1区、150LBは出発4番線・出発5番線・出発0番線に対応します。
・出発4番線からは神戸方に進出できますが、出発5番線及び出発0番線はこれより先へのルートがありませんので、150LBの進路であるこれら3線は主に笹島方←→東京方の折り返し列車の着発用かと思われます。
・それ以外の列車は150LAに従って貨物下り本線1区に進み、次に第2場内信号機501A/501Bを通過します。
・501Aは貨物下り到着通路線、501Bは貨物下り本線・貨物下り1番線に対応します。
・貨物下り本線及び貨物下り1番線の出発信号機502A/502Bには進路表示機が設けられており、貨物下り到着通路線と貨物下り出発通路線の両方に進出できるようになっています。
・つまり、稲沢駅で入換を行わない列車またはハンプにかからない継送車の入換を行う列車は501Bの進路であるこれら2線に進入し、ハンプにかかる列車は501Aに従って貨物下り到着通路線に進入するものと思われます。
・貨物下り到着通路線に進入した列車は次に第3場内信号機チを通過します。
・そして第4場内信号機901Rを通過し、到着2番線・到着3番線に至ります。
・「列車」としての運転はここまでで、以降は着機の推進による入換(おそらく構内運転)により押下0番線~押下5番線に押し込まれます。
・そのあとは入換機により、やはり推進でその左方の押上線に移動され、ハンプにかけられて分解されることとなります。
・先に記した通り稲沢は神戸方→東京方への一方通行になっていますので、ハンプにかかる下り列車は仕訳線やハンプの脇を延々と走って、最も上流側の遠い位置まで来ないといけないわけですね。
・到着列車を直接押下線に進入させて到着2・到着3番線を廃止することもできないことではないと思うのですが、この場合到着列車→押下線と押下線→押上線の競合が発生します。これを避けるために到着2・到着3番線からの推進にして押下線を一方通行にしているのだと思います。
次に下り列車の出発ルートです。
・神戸方→東京方の流れで分解後再度組成された列車は、最も下流側に配置された出発1番線~出発4番線に据え付けられます。
・それぞれ第1出発信号機213A~213Dに従って進出し、貨物下り出発通路線に進みます。
・やがて第2出発信号機503が現れ、貨物下り本線及び貨物下り1番線と合流します。
・先に記した通り、ハンプにかからない列車は貨物下り本線及び貨物下り1番線からそれぞれ502A・502Bで神戸方に進出するものと思われます。
・先へ進むと第3出発信号機トがあり、貨物下り到着通路線及び東海道上下線をオーバークロスし、さらに先に進んで第4出発信号機513Bを越えるとようやく東海道下り線に合流です。
・貨物下り出発通路線が東海道線をオーバークロスする際、貨物下り到着通路線も一緒にまたいでいるのがポイントですね。これにより東京方→到着線と出発線→神戸方の競合を解消しているわけです。
・本線に合流するまで、仕訳線やハンプの脇を延々と走らなければならないのは到着列車と同様です。
以上、下り到着列車と下り出発列車のルートを見てきましたが、ポイントは2つでしょうか。
1)到着線から押下線までの推進運転
2)到着通路線と出発通路線の立体交差
これらによって列車や車両の競合を回避していることだと思います。
たとえば最初に掲げた大正末期~戦前くらいの図(※)で見ると、
という感じで、下り出発と下り到着は競合しますし、到着2番線の貨車を押し上げているときは下り到着列車は到着線に 進入できない状況になってしまいます。
(もっとも当時はそれでも大きな支障はなかったのだと思いますが。)
配線図はT.Mさん及びSYさん(※印)よりご提供いただきました。
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