脇道15(鎖錠スイッチ)
日出谷駅の続きです。
連動表の「鎖錠」、「信号制御又はてっ査鎖錠」に続いて、そのとなりの「進路鎖錠」について話をします。
進路鎖錠という言葉自体今までの例には出てきませんでした。いったい何でしょう。
たとえば、場内信号機2Rを反位にして郡山方からの下り列車を下り本線に進入させようとします。列車が接近し、2Rの直下を通過して転てつ器7付近に到達したところで、2Rのてこを定位に戻したとします。
2Rが反位の状態では、鎖錠らんに記載されている通り、進路上の転てつ器7、8、12などは鎖錠されていますが、2Rを定位に戻した瞬間にこれらはすべて解錠され、きわめて危険な状態となってしまいます。これを防ぐために設けられたのが進路鎖錠で、列車が所定の区域を抜けるまでは信号てこを定位に戻しても転てつ器の鎖錠を保持する、というものです。
具体的に説明しますと、2Rの進路鎖錠らんには(AT、8イT)と書かれています。これは、列車が2Rの内方に進入した後に2Rを定位に復しても列車がAT及び8イTを抜けるまでは2Rによる鎖錠を保持し続けることを意味しています。これにより転てつ器7、8などの鎖錠が確保されるわけです。
今まで例として挙げた駅には進路鎖錠は設けられていませんでした。第2種連動装置の場合は、おそらく、「列車の通過中または通過直前に現場扱いの転てつ器を転換するヤツはいない」という前提があるのではないかと思います。日出谷駅の場合は第1種連動であり、一部の転てつ器がてこ集中となっていて途中転換の恐れがあるため、進路鎖錠が必要なのだと思います。
他の信号機についても同様で、記載された軌道回路を抜けるまではてこを定位に戻しても鎖錠が保持されます。
そのとなりの保留鎖錠については既に説明したとおりです。
次に鎖錠てこについて。
入換作業を行なう際、関係する転てつ器がすべて現場扱いの場合は転てつ担当と操車担当間の意思疎通が容易ですが、てこ集中となるとこれが難しくなります。
これに対する対応のため、多くの場合は入換標識を設けています。
列車に対しては信号機が
1)進路の開通方向
2)関係転てつ器の鎖錠状態
を示しているのと同様に、入換を行なう車両に対しては入換標識によってこの2点を示すわけです。
信号機の場合は上記2点に加えて
3)進路上の列車や車両の有無
も示しますが、入換の場合は進路上に車両がいる場合が普通のため、入換標識では3)は表示条件には入っていません。
誘導担当はトークバック等で転てつ担当に進路の構成を要求し、これを受けた転てつ担当は転てつ器を転換後入換標識のてこを反位にします。
すると転てつ器は鎖錠され、入換標識には進路が開通したことを示す表示がされます。
操車担当は入換標識の表示を確認して車両を誘導します。
しかしながら規模が小さく入換作業の頻度が低い駅では入換標識を設置するコストに見合った効果が得られないため、これよりも簡便な方法で入換作業の安全を確保しています。これが鎖錠てこです。
鎖錠てこを設けた停車場で入換作業を行なう手順は概略以下のようになります。
1)操車担当は転てつ担当に進路の構成を要求する。
2)転てつ担当は関係転てつ器を所定の方向に転換後鎖錠てこを
反位にし、操車担当にこの旨通知する。
3)操車担当は転てつ器付近に設けられた鎖錠スイッチに鍵を
差込み、反位に転換する。
4)鎖錠スイッチを反位に転換することにより鎖錠てこは反位に
鎖錠され、操車担当は入換作業を開始する。
つまり、転てつ器を鎖錠する鎖錠てこは信号扱所内にあるのですが、この鎖錠てこを鎖錠する鎖錠スイッチを現場に設けることにより、間接的に転てつ器の鎖錠が現場で行なえるようになっているわけです。
但し、鎖錠てこによる鎖錠では、転てつ器の鎖錠は確認できますが進路の開通方向は確認できません。
このため動力転てつ器にも転てつ器標識を設けて現場で進路の開通方向が容易に確認できるようにしています。
新津方の10号転てつ器付近です。電気転てつ器ですが転てつ器標識が設けられています。
入換標識を設置した場合は線路表示機によって進路の開通方向も確認できるため、動力転てつ器には転てつ器標識は設置されません。
これは大河津の例です。入換標識が設けられていますので転てつ器標識は設けられていません。
鎖錠SWの位置は連動図にこの記号で示されています。
日出谷駅の場合、郡山方・新津方それぞれに2か所、計4か所設けられています。
郡山方の21号転てつ器付近の鎖錠スイッチです。赤丸部分です。
次に鎖錠てこの連動関係を見てみましょう。
鎖錠てこは101と102の2本ですがそれぞれにL側反位とR側反位があります。
郡山方が101、新津方が102で、本線引き上げか安側引き上げかでL、Rを分けています。
鎖錠らんには鎖錠される転てつ器番号と進路を共用する信号機番号が記載されています。
1本のてこで複数の進路を共用していますので、現場では転てつ器の開通方向を十分確認する必要がありそうです。
また、意味不明な点がいくつかあります。
まず全体に言えるのが{21}や{51}など、現場扱いの転てつ器まで鎖錠すること。現場扱いの転てつ器を現場で鎖錠するのも妙ですね。
101LのAT~下り1では進路外の8が意味不明。
101LのAT~上り本、AT~Cでは、○{21}は{21}のミスですね。
102LのBT~Eでは進路外の11が意味不明。
最後に転てつ器について。
転てつ器の信号制御又はてっ査鎖錠らんに記載されている軌道回路名は、この軌道回路に列車または車両がいる時は当該転てつ器が転換できないようになっていることを表しています。これをてっ査鎖錠といいます。
たとえば、転てつ器7は軌道回路8イT上に列車や車両が存在するときは転換することができません。
進路鎖錠が設けられているのであれば余り意味がないような気もするのですが、入換作業時に必要なのかもしれません。
以上のように、転てつ器をてこ集中にするとてこと転てつ器間に距離が発生しますので、列車や車両の位置を正確に把握しないと途中転換などの危険が高くなります。
機械連動の時代は構内を見渡せる高い位置にてこ扱い所を設けて目視で確認していたようですが、さすがに原始的で保安度も低いため、構内に軌道回路を張り巡らして列車や車両の位置を把握するようになったわけですね。
日出谷駅の連動装置は「第1種継電連動鎖錠てこ式」と呼ばれます。
もう少し続きます。
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>101LのAT~下り1では進路外の8が意味不明。
>102LのBT~Eでは進路外の11が意味不明。
一応、意味はあります。AT~下り1を例にすると、
この条件が入っていない場合、8号が反位のまま鎖錠がかかり、入換が始まる場合が考えられます。そうして入換車両が8イTを踏んでいるときに、上り場内を設定しようとしてもてっ査鎖錠がかかり8号が定位転換できず場内ルートが引けないため、本線列車に支障を出してしまいます。
こういうことを未然に防ぐため、進路外でも8号を定位に転換させるようにしています。
昔の記事ですが、ちょっと読み返して気づいたのでコメントさせてもらいました。
投稿: 名無し信通区 | 2014年12月13日 (土) 21時59分
名無し信通区さん、ありがとうございます。
なるほど、そいうった理由があるわけですね。奥が深いなぁ・・・。
投稿: f54560zg | 2014年12月14日 (日) 16時24分