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2009年2月12日 (木)

脇道12(列車停止標識・閉路鎖錠)

松尾寺の続きです。

Photo

少し話がそれるように思えるかもしれませんが、ここで信号機の建植位置について説明します。

信号機の役割はその現示を運転者に伝えることは当然ですが、もうひとつ、その建植位置にも意味があります。
場内信号機の場合はその位置が停車場の境界を意味しています。つまり松尾寺駅の場合では、1L・1R・6Lから4L・4Rまでが「松尾寺駅構内」ということです。
出発信号機の場合は、その位置が列車の停止しなければならない限界を意味しています。これより手前で停止しなければいけないわけです。

これらの位置で、線路の左側もしくは直上に信号機は建植されなければならないのですが、実際には建築限界等の理由で本来の位置には建植できない場合が多々あります。
現示を伝えるだけならば多少位置がずれてもかまわないのですが、上記の通り特に出発信号機の場合は建植位置に大きな意味がありますので、単純に都合の良い場所に建てるだけでは不都合が生じます。
それではどうしているか、というと、信号機は支障のない位置に建植し、本来信号機を建植しなければならない位置に「列車停止標識」を設けます。

松尾寺駅の信号機7Lも本来の位置に建植できなかったため、代わりに列車停止標識が設けられています。

Photo_2

(7L)と書かれた下の、一見信号機と紛らわしい記号が列車停止標識です。
信号機の場合はそばにてこ番号が記入されますが、列車停止標識の場合はカッコで囲まれた番号が書かれているかもしくは番号が書かれていないので区別できます。

現物はこれです。

Photo_3
1柱に2基についている信号機の右下が7Lです。
赤丸部分に列車停止標識があるのですが、ちょっとわかりづらいですね。

他の駅の例を掲げましょう。

19790807a22
これは大白川の例です。正面の制限20km/h標識の上の少し高い位置に設けられています。右側に見える信号機が本来ここに建てられるはずなのです。

19791006b10
神岡線神岡駅の例です。

ついでに列車停止標識についてもう少し。
上記の通り信号機が所定の位置に建植できない場合には列車停止標識が設けられるわけですが、列車停止標識が設けられるのはこれだけではありません。出発信号機がない場所で列車の停止する限界を示す必要がある場合にも設けられます。つまり終端駅の終端側ですね。
上の神岡駅の例が実はこれで、終端側に設けられています。もし神岡駅が中間駅になったらこの位置に出発信号機が建植されたんですね、きっと。

なお、場内信号機の場合にも所定の位置に建植できない場合があると思いますが、その場合の代替表示は聞いたことがありません。停車場の境界を示すだけですから、まあおおよその位置でOK、ということでしょうか。

話を戻します。

出発信号機を所定の位置に建植できないと、もうひとつ困った問題が発生します。
さきほどの松尾寺駅の7Lで説明します。

もし7Lを所定の位置に建植できた場合、軌道回路53T上に列車や車両が存在したら7Lには進行信号を現示できないようにしなければなりません。つまり7Lの信号制御に53Tを加える必要があります。従って、上貨物着発線から発車した列車が軌道回路53Tに進入すると7Lは停止を現示することになります。
ところが松尾寺駅のような位置に7Lを建植した場合、上記のように7Lの信号制御に53Tを加えると、7Lの進行現示で出発した列車が53Tに進入したとたん、運転士は前方に見える7Lが突然停止現示に変わるのを目にしてしまいます。これでは本当に支障が発生しててこを定位に戻した場合と区別ができなくなってしまいます。
これを防ぐため、53Tは7Lの信号制御からは除外します。ただこうすると、53T上に列車等があっても7Lに進行信号を現示できてしまいますので、53Tに列車等がいる場合には7Lを定位に鎖錠するようにします。
ちょっとわかりづらいですが、「7Lの信号制御に53Tを加える」ということは、7Lを反位にしても53Tに列車等があれば停止を現示しますが、「7Lの鎖錠条件に53Tに列車等がないことを加える」ということは、53Tに列車等がある場合は7Lそのものを反位にできない、ということです。(このように軌道回路上の列車等の有無で信号てこを鎖錠することを「閉路鎖錠」と呼びます。)

ですので、本来であれば7Lの鎖錠らんには「53T」(53Tに列車等がいないこと)が記載されなければならないのですが、松尾寺駅の連動表にはこれが記載されていません。
おそらく記載ミスだと思います。記載の通りだと、53Tに列車等がいても7Lに進行信号を現示できてしまいます(もっとも実際に列車等がいれば運転士はいやでも気づくとは思いますが・・・・)。

次に入換標識について。

一般的に、入換標識を設けなければならない最大の理由は、入換作業の誘導者と転てつ器の取扱者の意思疎通が難しい状況の場合です。具体的には、離れた場所の信号扱所から動力転てつ器を操作するような場合です。誘導者は、関係転てつ器が正当方向に開通していて、なおかつこれらが鎖錠されていることを確認できないと、入換を開始してよいのかどうかわかりませんから。
入換標識は基本的には信号機と同様で、てこを扱うことにより関係転てつ器を鎖錠し、「線路が開通しているとき」の表示をします。ただ信号機と違うのは、信号制御がないということです。つまり、進路上の車両の有無は判断していません。入換作業の場合は進路上に車両がいるのは当たり前ですからね。
誘導担当は、入換標識が「線路が開通しているとき」の表示であることを確認して運転者に合図を出します。
転てつ器が現場扱いの場合は、入換作業の誘導者と転てつ器の取扱者は近くにいて意思疎通が十分な場合がほとんどですから、入換標識は設置されないのが普通です。

松尾寺駅の入換標識5Lは、転てつ器は現場扱いですが、専用線から来る車両に対して構内への進入の可否を指示しなければならず、誘導者と転てつ器取扱者の距離が離れているため設置されたものと思われます。

ただ、素人考え的には、専用線からの車両を脱線転てつ器52ロの手前でいったん停止させれば誘導者と転てつ器取扱者の意思疎通は十分可能(すなわち入換標識は不要)かな、と思います。入換標識のてこは本屋付近にありますから、転てつ器取扱者→本屋の信号取扱者→入換標識→誘導者という伝達ルートはちょっと面倒くさいのでは?

それはさておき、5Lの鎖錠らんには23、52、55としか記載されておらず、その他の関係転てつ器は記載されていません(連動図には番号が書かれていない転てつ器もありますが)。記載されていない転てつ器は適当に・・・、ということでしょうか。せっかく入換標識を設けている割にはちょっと荒っぽいような気がします。

また、前述の通り入換標識の場合は信号制御を行ないませんので、信号制御らんには何も記載されません。

話が少しそれますが、脱線転てつ器52ロが出てきましたのでついでに気づいたことを。
連動図を見てわかるとおり、52ロは脱線させない方向に開通している時が定位になっています。これは特殊なのではないでしょうか。脱線転てつ器の意味が薄れてしまうような気がします。
また、通常の転てつ器標識は「定位」の時は青い円形、「反位」のときは黄色い矢羽根ですが、脱線転てつ器標識は「脱線させる方向に開通している時」は赤い長方形、「脱線させない方向に開通している時」は黄色い矢羽根です。従って、脱線させる方向に開通している時」が定位ならば、「脱線させない方向に開通している時」=反位=黄色い矢羽根となるのですが、この52ロ転てつ器の場合は「脱線させない方向に開通している時」=定位=黄色い矢羽根となり、通常の転てつ器標識とは一致しない表示となります。

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矢羽根の転てつ器標識=反位と思いがちですが、これが定位です。
ちょっと違和感がありますね。

ついでにもうひとつ。入換信号機について。
入換標識と入換信号機は何が違うのでしょうか。

入換というと、通常車両の連結や開放を伴うため、微妙な運転操作が必要となり、誘導者が不可欠となります。前述の通り、動力転てつ器を使用した場合など転てつ器の鎖錠状態がわかりづらい場合に入換標識を設けて誘導者に鎖錠状態を示しています。
しかしながら入換の中には連結や開放を伴わないものもあります。たとえば列車から切り離した機関車を単行で機関区まで引き揚げる場合とか、電車区間で終着列車を折り返すためいったん引き上げ線に収容する場合などといった定例的な作業です。単純な移動だけの作業にも誘導者を添乗させるのはもったいないですから、このような作業の場合には誘導なしで運転者が単独で車両を移動させたほうが効率的です。このために設けられるのが入換信号機です。
但し誘導なしの場合は、進路上に列車や車両が存在すると危険ですから、これらの有無も合わせて表示させる必要があります。つまり入換信号機の場合は軌道回路による信号制御が行なわれます。
整理すると以下のようになります。
・だれが確認するのか
  入換標識は誘導者が確認する。
  入換信号機は運転者が確認する。
・信号制御はあるか
  入換標識にはない。
  入換信号機にはある。

次回に続きます。

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