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2009年1月 7日 (水)

脇道4(第1種機械)

今度は違う駅を例にとります。

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これはすでに記事にした同和鉱業線の大館駅の連動図表です。

信号機が腕木式であることは先に例として取り上げた駅と同じですが、違うのは主要な転てつ器が現場扱いではなく「遠隔操作」であることです。

先の記事で「転てつ器のてこは分散配置される場合と集中配置される場合の2通りがある」と書きました。先の駅は分散配置の例でしたが、この大館駅は集中配置の例です。
もっとも、集中配置といっても、それは本線関係の主要な転てつ器のみであり、連動に関係のない側線等の転てつ器は現場扱いです。

ちょっと見にくいので、必要な部分だけ拡大します。

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場内信号機の1~4、出発信号機の14~19は当然ながら、転てつ器のうち7~12のてこが信号扱所(図の引上2番線の上に所在)に集中して設けられています。これ以外の転てつ器は現場扱いです。

現場扱いの転てつ器においては、目の前を車両が通過している最中に転てつ器を転換するようなことは想定していませんが、遠隔操作となると当然その危険が発生しますので、信号扱所は構内が見通せる場所、通常2階部分に設けられます。

連動表を見てみましょう。

花岡方からの旅客列車を旅客発着2番線に進入させる場合、通過する転てつ器は順に7、8、10であり、これらがすべて定位でなければなりませんので、場内信号機1の鎖錠欄にはこれらの番号がそのまま記載されています。
出発信号機16は場内信号機1と進路を共有しますのでこれも記載されています。
このあたりは先に例として挙げた駅と同じですね。

次に花岡方からの貨物列車を花岡貨物到着線に進入させる場合です。
関係する転てつ器と開通方向は、7:定位、8:定位、10:反位、11:反位で、進路を共有する出発信号機はありませんから、信号機2の鎖錠欄には「7 8 ○10 ○11」と記載されるはずです。
しかしよく見ると鎖錠欄には進路外の転てつ器9も反位に鎖錠するように記載されています。推定ですが、花岡方からの貨物列車が花岡貨物到着線に進入している時に引上1番線を使用した入換作業を行なっていた場合、転てつ器9が定位方向に開通していると、誤って車両が逸走した場合に貨物列車と衝突してしまう恐れがあるため、これを防止する目的で転てつ器9を反位に鎖錠しているのではないかと思われます。
出発信号機18の鎖錠欄の「○9」も同様の理由かと思います。

場内信号機3、出発信号機14、15の鎖錠欄に記載されている「10」も進路外の転てつ器ですが、この理由はちょっとわかりません。同じように万が一の時の事故を防止するためではないかとは思うのですが・・・。

また、信号機2を反位にした時に入換車両の逸走を想定して転てつ器9を反位に鎖錠するのであれば、同様の理由で、信号機4を反位にした時に転てつ器51を定位に鎖錠しなくてよいのか、という疑問も生じます。
これも推定になりますが、転てつ器51は現場扱いであり転てつ担当と入換担当との連携がとりやすい状況であるのに対して、転てつ器9はてこが離れた位置(信号扱所)にあるため転てつ担当と入換担当との連携ミスが起きやすいことを考慮しているのではないかと思われます。
つまり、目の前を貨物列車が通過しているさなかに入換担当が現場扱いの転てつ器を衝突の恐れのある方向に転換することは想定しないが、遠隔操作の場合は入換担当の意思を無視して信号扱所の係員が勝手に転換してしまう事態が想定される、ということなのでしょう。

連鎖関係の論理についてはこんなものかと思います。

信号てこ・転てつてこの形態については、信号扱所という独立した建物内のため、通常目にすることができません。私も見たことがありませんが、本などで見る限りてこの形態は信号てこも転てつてこも先に紹介したような信号てこの形態のようです。

連動機についても見たことはありませんが、てこが集中して配置されていますので、駒組によっててこそのものに連鎖が設けられています。
(但し、以前LJさんからいただいた情報によれば、転てつてこは集中配置されているものの信号てことの間にてこ相互間の連鎖を設けず、信号てことの連鎖は各転てつ器付近に設けた連動機で行なうという、変わったワザもあるようです。すぐそばにあるてこ同士で鎖錠を行なわず、わざわざずっと離れた場所で鎖錠を行なう理由が不明ですが。)

信号てこと信号機は先の例と同様ワイヤーで結ばれますが、転てつてこと転てつ器は通常鉄管で結ばれます。
信号機は錘が自重で下がった状態で停止(定位)を現示し、ワイヤーで錘を引き上げることにより進行(反位)を現示させます。ワイヤーを緩めれば勝手に錘が下がって定位に戻ります。従って、「引っ張る」動作さえできればよく、「押す」動作が不要のためワイヤーで事足ります。
転てつ器の場合は「引っ張る」動作と「押す」動作の両方が必要なため鉄管が使用されます。

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これは野村駅の例です。信号扱所の建物の下からはワイヤーと鉄管が信号機と転てつ器に向けて散って行きます。

ここで用語を整理します。

最初に例として挙げた駅のように、各転てつ器付近に設けられた連動機のことを「第2種連動機」と呼びます。
・軌道回路がなく、
・信号機は機械式信号機(≒腕木信号機)、
・転てつ器はすべて現場扱い、
・信号機と転てつ器の連鎖を第2種連動機を介して行なう。
このような信号保安システムを「第2種機械丙連動装置」と呼びます。

同和鉱業線の大館駅のように、信号機・転てつ器のてこ相互間の連鎖を行なう駒組を「第1種連動機」と呼びます。
・軌道回路がなく、
・信号機は機械式信号機、
・主要な転てつ器はてこ集中、
・集中して設けられた信号機・転てつ器のてこ間の連鎖を
 第1種連動機を介して行なう。
・現場扱いの転てつ器とは第2種連動機を介して行なう。
このような信号保安システムを「第1種機械丙連動装置」と呼びます。

いずれも軌道回路がないことから、閉そく方式としては通票閉そく式、票券閉そく式または通票式が施行されている線区に限られます。

第2種機械丙連動装置は最も原始的なシステムで、だいぶ改修が進んでいましたが、それでも1980年頃はまだまだローカル線を中心にかなり活躍していました。
今までご紹介してきた中では、荒屋新町西若松郡上八幡伊賀上野ほか多くの駅が該当します。

第1種機械丙連動装置も原始的なシステムですが、比較的規模の大きい駅に採用されたシステムのため、より早い時期に保安度の高いシステムに改修されています。
今までご紹介してきた中では、同和鉱業線大館野村などで、厄神粟生が微妙です。
近江鉄道線貴生川も該当するかもしれません。

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コメント

初めまして、
もうほとんど機械連動は見かけませんね。腕木式の信号機を管理していた人に聞いたことがありますが、信号機の清掃時に矢羽を跨いでいると、先輩がてこを返すいたずらで、おまたに当ったとかよく聞きました。機械式の入換標識はロボットなんて呼ばれていたようですよ。

はじめまして。コメントありがとうございます。
そういう信号機の使い方もあったとは知りませんでした。
「ロボット」ですか・・。確かに2つ目玉ですからね。

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