脇道2(信号てこ・転てつてこ)
それでは今回は、昨日の記事の通り、信号機と転てつ器、もしくは信号機同士に連鎖関係を持たせるための具体的手段について説明しましょう。
その前に、昨日の記事では、「信号機を定位にする」とか、「転てつ器を反位にする」とかいった表現をたびたび使いましたが、そもそもどうやって定位にしたり反位にしたりするのでしょうか。
信号機や転てつ器を転換するために人間が操作するものは「てこ」と呼ばれています。
何故かはわかりませんが、おそらくはてこの原理を利用して軽い力で操作できるようになっているからかな、と思っています。
連動図表を再度掲げます。
信号てこは、図の右下の
のマークのところにあります。
(ちなみに、その左隣の「A」のマークは駅本屋を示します。)
信号てこは全部で5本ですが、ここに5本並んでいます。
他の駅になりますが、実例を掲げます。
これは松阪駅の例です。比較的大きい駅ですので、12本の信号てこがズラリと並んでいます。右から3番目の信号てこは手前に倒されて反位になっれいますが、それ以外は定位です。
信号てこと信号機は通常ワイヤーで結ばれており、ホームの下から出たワイヤーが滑車で向きを変えて信号機に至ります。
これは加悦鉄道丹後山田駅の信号てこです。
出発信号機がないため場内信号機のてこが1本だけ、しかも雨ざらしです。
てこからのワイヤーはいったん写真左側に向かった後向きを変え、白いフタをされた通路を通り、分岐器付近で線路の下をくぐって、またフタをされた通路を通って信号機に向かっています。
このように、信号てこは駅本屋付近に集中して設けられるのが一般的です。
これに対し転てつてこは、信号機と同じように集中して設けられる場合と、各転てつ器ごとに分散して設けられる場合の2通りがあります。
集中して設けた場合は転換の都度係員が現場に出向く必要がありませんが設備コストが高くなります。どちらにするかは転てつ器の転換頻度を勘案して決定されるのでしょう。
ところで、なぜ信号てこは「集中配置」のみで「分散配置」がないのでしょう。
理由は良くわかりませんが、想像するに、
・場内信号機は駅の最外方の分岐器よりもさらに外方にあり、
駅本屋からかなり遠い位置になるため、都度係員を
向かわせるのが大変。遠方信号機ならなおさら。
・信号機は列車に対して進入・進出の可否を指示するもの
であり、駅長との密接な連携が必要。従って本屋から
離れた位置で信号機を操作するとこの連携にミスが出る
恐れがある。
といったところではないでしょうか。
転てつてこの場合は、分散配置により連携ミスが発生したとしても、転てつ器と信号機の間に連鎖関係が設けられているため、作業の時間的なロスは発生しても信号機の操作を誤る事態には至らないため現場扱いが許されているのではないのでしょうか。
実例として挙げた駅の転てつ器てこは現場扱い(分散配置)になっています。
連動図の下図の部分、
「No.1」と書かれた左の、いかにも「てこ」のような記号が転てつてこを表しており、転てつ転換器と呼ばれます。
その下の、○に「大」とかかれたものは、転てつ器標識を表しています。
正確にはちょっと違うのですが、おおよそはこんな感じです。川端駅です。
左が転てつ転換器、右が転てつ器標識です。
転てつてこはこれだけではありません。
下図も転てつてこを表しています。
転てつ器標識を示す○の記号に斜めの短い線が追加されています。
これは図が示す通り、転てつ器標識とてこが一体となったもので、
標識付転換器と呼ばれています。
一戸駅です。
標識の右下のレバーを操作して転てつ器を転換します。
転てつ転換器と標識付転換器の使い分けの基準は良くわかりませんが、実例を見る限り、
・渡り線など、複数の転てつ器を同時に転換する場合には
転てつ転換器
・電気的な鎖錠を設ける場合には転てつ転換器。
(標識付転換器には機械的な鎖錠は設けられるが
電気的な鎖錠が設けられない。
「電気的な鎖錠」については後述)
・それ以外には標識付転換器
といったように思います。
(もっとも、実例として掲げた駅の21、22の転てつ器は上記にあてはまっていませんが・・・)
なお転てつ器を転換するためのものには、上記のほか、
・錘付転換器(いわゆるダルマ)
・ポイントリバーS型
と呼ばれるものがあります。
錘付転換器の例です。上田駅です。日本全国、どこでも見ることができました。
名前の通り、円盤状の錘の重さだけで先端軌条の密着を確保するという、きわめて原始的なものです。
白い部分が上ならば定位です。
ポイントリバーS型の例です。美濃太田機関区です。
錘付転換器の改良版らしいです。車両基地などにはこのタイプが多かったですね。
錘付転換器とポイントリバーS型については、鎖錠機構を設けることができません。
鎖錠機構を設ける必要のある本線関係の転てつ器には転てつ転換器または標識付転換器、それ以外の側線関係の転てつ器には錘付転換器やポントリバーS型が使用されます。
ただし、何事にも例外はつきもの。
下は野上電鉄日方駅です。
どうみても本線と思われる線路に錘付転換器が使用されています。
当然信号機はありません。
いったいどうなっているのか、ナゾです。
信号機と転てつ器間の連鎖を設ける装置について書くつもりでしたが、てこの話だけで疲れてしまいました。次の記事で書くことにします。
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